金大中(キム・デジュン)大統領をはじめ、指導者級の人物110人が、密かに北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金正日(キム・ジョンイル)総書記が送ってきたマツタケを分け合っていたという知らせに、驚きを禁じえない。各分野で国を率いる人々が、このような振る舞いに出るとは、失望せずにはいられない。いくらマツタケが貴重だからといって、核兵器を開発中の北朝鮮の贈り物を受け取ること自体、軽はずみな行動であるといえる。政府はマツタケを受け取ってから10日間も内密にし、国会議員の要求に応じて仕方なく受け取った人物のリストを公開したというから、まことに情けない話である。
マツタケを受け取った人々は、それぞれ立場が異なるだろう。北朝鮮の経済視察団が訪問した企業や団体の責任者らは、彼らが準備した誠意をむげに断ることができなかっただろう。出し抜けに受け取って驚くあまり、ちゃんとした対応をできなかった人もいるだろう。
しかし、金大統領、林東源(イム・ドンウォン)大統領特別補佐役、丁世鉉(チョン・セヒョン)統一部長官など、対北政策の責任を担っている人たちは、同じような振る舞いをすべきでない。北朝鮮の核廃棄が焦眉の懸案として浮上している状況で、彼らのうち誰かが「マツタケではなく核廃棄の約束をプレゼントに」と、き然とした態度でマツタケを断るべきだった。贈り物を受け取った彼らが、核問題の解決に向けて相手に決然とした意志を示すことができると期待することは難しい。
贈り物はやり取りするだけの大義名分がある時に意味がある。南北は、今のんびりと贈り物をやり取りしている時ではない。北朝鮮の贈り物の中に真心がこもっているとも思えない。密かに核兵器をつくってきた北朝鮮が、純粋な心でマツタケを贈ったとは考えられないからだ。
日本は、日朝首脳会談の際、マツタケを受け取ったものの、拉致犯罪の集団が贈った物を平然と食べることはできないと、すべて焼却したという。政府当局者らが、そのような事実を知らないとは言えないだろう。何も考えずに受け取ったマツタケのために、北朝鮮が「核開発は南北関係に何の障害にもならない」と判断しないか心配である。