この映画の金サンジン監督は、企画段階時から「『三流』映画の決定版になるだろう」とと話していた。それは、監獄に「Uターン」するこじ付け的な状況と釣り合わない二人の主人公のために、いかにももっともらしく聞こえた。しかし、映画は堅実なストーリーと二人の主演の演技で「とにかく笑わせれれば最高」という韓国コメディー映画の興行不文律を通り避けていく。
「出る理由って?出なければならんからだよ!」
これがジェピルが脱獄する理由だ。1年2ヵ月の懲役刑を言い渡された単純窃盗犯のジェピルは、脱獄を繰り返しているうちに刑が8年に増える。なぜ出なければならないのかも知らないまま、さじ一つで6年間トンネルを掘ったジェピルは、変心した恋人(宋ウンア)のことで腹が立っているムソクと一緒に脱獄を敢行する。自由を得た喜びもしばし、脱獄した翌朝の新聞を見た二人は、自分たち光復節(8月15日の独立記念日)特別恩赦の名簿に上がっていることを知るようになる。脱獄したことが外部に知られるのを恐れて悩む矯導課長は「帰ってさえくれば、なかったことにする」と約束する。ジェピルは、一刻に早く帰ろうとするが、恋人を取り戻すまでには帰るまいと粘るムソクのために、ことはこじれるばかりだ。
映画「光復節特別恩赦」が、これまでの韓国コメディー映画よりは多少「アップグレード」しているような印象を与えるのは、コメディーにドラマを合せたのではなく、ドラマにコメディーを加味したおかげだ。すなわち、この映画はドラマ的な構成が堅実なコメディーとして自然に笑いをかもし出す。
金サンジン監督と作家の朴ジョンウ氏がコンビを組んで作った「ガソリンスタンド襲撃事件」や「新羅の月夜」に比べて、笑いは少々少な目にこぼれるが、少なくとも「30秒に一回ずつは笑わせなければならない」というコメディー映画の慢性的な強迫観念は見当たらない。
しかし、暴動を起こした囚人たちがきょう導官と対立する群衆シーン(Scene)と、人情に訴えるジェピルの説得で双方のかっ藤が一瞬に解消される場面は、常とう的だ。きょう導所の視察に現れたところで人質に取られた国会議員たちが、囚人の気に入るために自身の前科記録をさらけ出す場面は、政治家たちに手ひどく迫ろうとした世相風刺にもかかわらず、洗練さに欠けている。
「新羅の月夜」で「二枚目の俳優もコメディーができる」ことを逆説的に見せてくれた車(チャ)スンウォンは、この映画でも真価を発揮した。さじを見るだけでも感情がこみあげて涙がたまってしまう演技は、コメディーでありながらもペーソスが伝わる。濃いピンク色の背広を着て歌謡曲「桃色のリップスティック」を口ずさむ薛(ソル)ギョングのチンピラ演技も「さすが薛ギョング」という感嘆をかもし出す。映画の後半部には、金サンジン監督がびっくり出演している。
全州工業高校の敷地に建設されたセット場で撮影し、8月15日の光復節前後に封切りする予定だったが、夏の水害で撮影が一ヵ月以上も遅れた。8億ウォンを投じて制作したきょう導所の建物の屋根が強風で崩壊した。ジェピルが、脱獄直後にパン屋の前で涙を流しながらパンを食べる場面は、降り続く雨で6回も撮り直した。15歳以上観覧可。22日封切り。
金秀卿 skkim@donga.com