「もう野球やりたくない」
チョ・ヨンジュン(写真)には野球をやめたいと思ったことが一度だけある。それは、全羅南道順天(チョンラナムド・スンチョン)にあるヒョチョン高校1年の時だった。
チョは自分とコーチとの不和がチームメートまで被害に会わせたことを苦しみ、宿舎を抜け出し、そのまま上京してしまった。友達の家に泊めてもらっていたチョは、息子を探して上京した母親のハン・ヨンシムさん(44)に「おれ、もう野球やらない。工業高校にでも入って、技術習うわ」と話したという。
しかし、結局、チョは涙で訴える母親の手に引かれて順天に戻り、その一週間後、学校にも戻って再びボールを手にした。当時、監督は「八色変化球」で有名なチャン・ホヨン(現信一高校監督)監督だった。内野手だったチョはチャン監督との話し合いの末、投手にポジション替えし、本格的な「投手授業」に入った。
チョは「スライダーの投げ方もあの時覚えたし、投手として持つべきすべてをチャン監督に教えてもらった」と振り返る。投手に転向してからは、実力もぐんと上がった。野球歴史の浅かったヒョチョン高校は黄金獅子旗大会など全国大会で突風を巻き起こした。
しかし、高校卒業を控えていた98年、チョがプロ球団の現代(ヒョンデ)に指名されたのは2回目の5番目。新人りのうち35番目で、それほど大きな注目は集められなかった。
チョはプロ入りするかわりに、延世(ヨンセ)大学に入学した。大学での4年間、韓国代表として活躍、可能性を高く評価され、今年、5億4000万ウォンという破格の契約で現代に入団、誰も予想できなかった旋風を巻き起こした。
175cm、72kgの小柄の体から振り出される最高球速148kmの剛速球や直球スピード並みの140kmの「鋭く切れるスライダー」は、ほとんどの打者が手も出せないほどだった。140kmに及ぶスライダーは「国宝級投手」の宣銅烈(ソン・ドンヨル)以来、韓国投手の中では最も速いスライダー。「チョ・ライダー」というあだ名の由来もここから来ている。
4月5日、開幕戦の水原(スウォン)SK戦から5月4日の水原三星(サムスン)戦までの一ヵ月間、新人最多の30と1/3回を投げて、無自責の好投。さらに、7月9日の水原三星戦から9月7日の文鶴(ムンハク)SK戦まで21試合連続無敗。
歴代新人最多セーブポイント(37SP、9勝28セーブ)に平均自責率1.90の成績は、今シーズンの最優秀新人賞を受賞するに充分値する。
オーストラリアでのキャンプのため、授賞式には出席できなかったが、チョは国際電話で「平凡な野球選手だった僕をここまで育ててくれたチャン監督に感謝の意を申し上げたい」と、感謝の思いを恩師に捧げた。
金相洙 ssoo@donga.com