大統領候補らが先を争って現実とかけ離れた公約を発表しており、大統領選挙が差し迫ったことを実感させている。せっぱ詰まった候補らが慎重を期せずに公約を乱発しているが、各党の本音はすでに看破されている。きちんと検証できる時間もないはずだから、良いものか悪いものか、可能なものか不可能なものかは正さずに、ひとまず公約を発表し、票を確保しておこうという意図なのだ。そのため、大統領選挙後の事態が懸念される。しかも、各党が互いに公約を盗用、ひょう窃しており紛らわしい。
まず兵役期間を短縮するとの公約は無責任すぎる。92年の大統領選の時も、野党ハンナラ党の前身である新韓国党が2カ月短縮するとの公約を掲げていたが、現実的な政策だけに実現されなかった。それを李会昌(イ・フェチャン)候補が97年の大統領選に続いて再び持ち出している。これについて、与党民主党は人気取りの公約として非難の意を示したが、盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補は一歩遅れてさらに非現実的な「4カ月短縮」を公約として提示した。2度、3度の提案のうえ、ひょう窃と翻意までしているわけだ。
すでに、本欄で指摘しているように、行政首都の移転問題も30年以上もたった大統領選公約の定番だが、これまで実現されずにいるのは、簡単に接近し難い国家的な大事業だからだ。盧候補が1年内に敷地を選定し、任期内にインフラを構築すると約束しているが、果たして実現されるかどうか疑問だ。家族が不正事件にかかわった場合も、即時大統領職を退くとしている李候補も信頼しがたい。憲法を守護し、国家を運営する大統領職という座は、そのように簡単に退くことができるポストではないのだ。
任期を短縮してでも改憲を実現させたいとしている李候補のコメントや、盧候補と鄭夢準(チョン・モンジュン)両氏が5年間にわたって共同政権を運営するとの構想も、やはり票の確保を狙った臨時の策という印象が強い。しかし、人気に迎合するための人気取り公約や目の前の危機から逃れるための空の公約にだまされる有権者はそれほどいない。またそんな有権者がいてはならない。
有権者を見下ろしたような公約のひょう窃はさらに悪い。候補は、まったく現実性のばら色の公約で有権者をげん惑させるよりは、現在こうした苦情があるが、ともに耐えて乗り越えていこうと正直に語れる姿勢に戻らなければならない。むしろ、その方が強い呼訴力を持つはずだ。