金融戦略家で作家のピーター・タスカーは06年を予測した近未来小説「ドラゴン・ダンス」で、「日本の改革が遅れ、景気がさらに悪化した場合、街には家族単位のホームレスがあふれ、各商店と企業は略奪されるなど、治安不在の状態に陥りかねない」と警告している。
一方、日本経団連が1日、「活力と魅力あふれる日本をめざして」という肝いりの国家長期ビジョンを発表した。経団連会長の奥田碩・トヨタ自動車会長の名前をとった「奥田ビジョン」は、25年までの経済・社会的変化を予測し、これに必要な政策を提案した。また、1993年に廃止した企業の政治献金を今年から再開し、政策評価を政治献金の基準にしたいという意思を強く示した。
奥田会長はまず、年平均2%の実質成長率を上げるため、消費税を毎年1%ずつ引き上げ、現行の5%から14年までに16%に引き上げるという思い切った提案をした。高齢化社会ではセーフティーネットの強化を通じて老後に対する不安をなくしてこそ、消費が蘇り、経済回復が可能だと主張している。
また25年には労働人口が610万人くらい減少すると予測し、外国人労働者の移民を許すべきだと主張した。国家の行政権限を地方に移し全国を5〜10地域に分けて州制度を導入するというアイデアも盛り込まれた。このうえ、省エネ技術などで世界市場をリードする「環境立国」を進めるほか、韓国、中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などと連係し東アジア自由経済圏を作るべきだと主張した。
日本の財界がこのように積極的に乗り出したのは、01年4月発足した小泉純一郎内閣の改革が滞っており、これ以上経済回復を政治家や官僚にだけ任せないと判断したためである。日本政府は常に改革を唱えてはいるが、昨年東京証券市場の日経平均株価が19年ぶりに最低値となり、失業率は史上最高の5.3%まで跳ね上がった。
李英伊 yes202@donga.com