現在の壮年層以上の世代の中には、かつて経験した厳しい寒さを覚えている人が多い。食べることにも事欠いていたあのころ、凍えるほおにあたる冷たい風はなんと厳しかったことか…。先日、ソウルの朝の最低気温がこの冬一番のマイナス15.5度まで下がり、さらに秒速5メートルの強風で、体に感じる体感温度がマイナス28度を記録した。壮年世代にとって、この程度の寒さは子どものころに経験したはずなのに、国全体が凍えついたような有り様だ。体感温度を感じる人々の感覚メカニズムも、歳月とともに変わるものだろうか。
◆気象学的にみると、体感温度は風速と湿度、日射量などを考慮した複雑な数学方程式の産物である。この方程式によると、風速が秒速1メートルずつ増えるたびに、体感温度は1〜1.5度ずつ低くなる。気温が0度の場合、風速が秒速5メートル(時速18キロ)、秒速10メートル(時速36キロ)、秒速15メートル(時速54キロ)の時の体感温度は、それぞれマイナス8.6度、マイナス15度、マイナス18度となる。一方、風が強くなるほど体感温度が上がる場合もある。大気の温度が体温より暑い砂漠のようなところがその例。夏の暑いときによく登場する「不快指数」という用語も、気温と湿度の要因を組み合わせた一種の体感温度といっても間違いではない。
◆気象情報を鵜呑みにして、薄着で外出したばかりに風をひいてしまったという例のように、公式指標と実際の体感温度との差が大きいほど、ひどい目にあう場合も多い。経済統計上の指標と実体経済の上に現れる体感景気との隔たりが代表的なケース。確かに物価は下がったというものの、買い物かごは軽くなる一方と、主婦の誰もが感じていることがそうした事例にがい当する。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核問題も同様、国際社会は異口同音に危機を唱え、北朝鮮の核兵器に注目しているのに対し、いざわが国の一部では「統一すればわれわれのものなのに」ときている。国の外の温度計が間違っているのか、それともこの国の人たちの体感温度が間違っているのか疑わしいばかりだ。
◆最近、政権引き継ぎ委員会を発信源とするあらゆることばに接しているうちに、政治の体感指数も早急に調整すべき対象であると思わずにはいられない。新しい政権を率いる主役たちの「意欲」と、それを見つめる世間の体感指数との間に大きなすき間が空いてはいないか、警戒すべきだ。今回の大統領選で20代、30代と、50代、60代の間にみられた政治的体感指数の差も埋め合わせなければならない課題だろう。財閥の立場からみれば、政権引き継ぎ委員会から次々と出される各種経済政策には、余りにも厳しいものが多く、財界が感じているこの冬の体感温度は、限りなく低いようだ。
宋文弘(ソン・ムンホン)論説委員 songmh@donga.com