
大分県は温泉だけではなく地下水も水質がよく水量が多いことで知られる。その中でも日田は「水郷日田」と呼ばれたところ。札幌ビールの新九州工場と3つの日本酒の醸造場がここにあるといったらこれ以上の説明は要らないだろう。
長崎を出発して、東に進んで入った大分県。一番最初に日田を通る。険しい山岳に囲まれたところ。街はその真っ只中の平地にある。その中に三隈川が流れる。
川辺の温泉旅館の山陽館を訪ねた。日田のすべての温泉旅館は、この川辺に立ち並んでいる。それには特別な理由があった。その日の夕方、オーナーは宿泊客の夕食を部屋ではなく、船に支度した。その船はロビーの前の階下にある旅館専用の船着場にとまってあり、家のように作られた船内の畳部屋には、一種の宴会である懐石料理で夕食が準備されていた。
席に腰を掛けると、着物姿の50がらみの女性は、暖かい日本酒と冷たいビール、そしてかにの刺身など、酒と食べ物を運んでくる。2人の船頭は、船の両端でさおをさし船を川面に浮かべた。屋形船と呼ばれるこの船に乗って、真夜中に川で楽しむ夕食は、水郷日田の名物だという。真夏には川全体が明かりをつけた屋形船でいっぱいになり、美しい夜の景観を演出する。
今度は日田の酒の話だ。よい酒はきれいな水から作られるものだ。日本全国に工場を9カ所持つ日本最初のビール会社である札幌ビールが、九州では唯一、日田に工場を建てたことからも水郷日田の名声がわかる。日田市が一目で眺められる山沖の森林の中、ビール工場はそこにある。工場を「ビール・フォレスト・ヒル(Beer Forest Hill)」と名づけた理由がようやく分かってきた。
ビール博物館になっている工場の一階のロビー。ビールの製造工程を見せ、説明する見学プログラムは、1時間程度。最後のコースはビールの味見だ。ドイツ式のビアホール、英国式のパブなど、さまざまなスタイルのビールバーがあり、そこで新鮮な生ビールが飲める。誰もが20分間に飲み放題だ。公園のように美しく飾られた山沖の工場の前にあるフォレストヒル。眺めのよいところには、店と食堂がある。この食堂ではステーキなどをビールとともに食べられる。
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