盧武鉉(ノ・ムヒョン)次期大統領が、高建(コ・ゴン)前ソウル市長を次期政権の首相に内定した。次期大統領の言葉通りに解釈すれば、「改革の大統領と安定の首相」という構図になる。大統領は、政治改革など改革に尽力し、首相は内政の安定に取り組むということだ。高氏が「安定の首相」の適任者であれ、政府高官に求められる道徳性の基準を満たした人物なのかどうかは、国会での人事聴聞会の結果を見守らねばならない。
盧次期大統領は、急進的な改革に対する国民の不安を吹き飛ばすために、「安定の首相」を選択したはずだ。しかし、「安定の首相」は、特定人事やイメージだけでお墨付きというわけにはいかない。国民が、首相を通じて、国政の安定感を感じられるかどうかは、「改革の大統領」と「安定の首相」の関係がどのように設定されるかにかかっているといえよう。
盧次期大統領は、前から「責任首相制」を強調している。これは、憲法に定められている通り、首相が「大統領の命を受け、各中央行政機関を長をつかさどる」実質的な権限を持ち、それに伴う責任を負うこということだ。
この場合、改革と安定が相互補完的に機能できるかどうかが非常に重要な問題だ。国政の安定なしには改革も不可能だとされているが、わが国の伝統的権力文化からすると、ともすれば「改革の大統領」を無条件支持することが「安定の首相」の役割になりかねないからだ。そうなれば、歴代政権の例からも分かるように、一方通行型の改革による国政の混乱と後遺症を深める公算が大きい。
このため、「安定の首相」を強調するより、首相が言葉通りに「責任の首相」になれるよう制度的な枠組みを整えることが先決だ。盧次期大統領は、これから新政権の政策と人事問題など主な政策方向について、首相内定者と議論し協力するという具体的な実践を通じて、「責任首相」の位置付けを明確にしなければならない。そうしてこそ、実質的な「安定の首相」になれる。
次期政権の初首相がその役目を全うできるかどうかは、次期政権の成否にも直結する問題である。