歌手の李ジョンヨル(32)は10年あまり、韓国のフォークミュージックを守りつづけてきた。
92年のデビュー時から「フォークの末っ子」と呼ばれたが、まだ後輩が出てこないでいる。それでこの頃は「孤独感」さえする。
彼が最近4枚目のアルバムを出した。
このアルバムの話題はフォークの様変りだ。収録曲のうち、叙情的なフォークは「このままがいい」の1曲だけで、大半の歌はロックに近い。歌唱法や曲の構成、歌で伝えようとするメッセージなどすべてそうだ。
最初のトラックの「サバ」をはじめ、ハン・ヨンエの歌をリメークした「調律」、対話の回復を歌った「私を呼んで」、モダンロックの雰囲気を帯びた「脱皮解体主義」など。このような歌はロックバンドを連想させる。
「サバ」は80年代の「民主化運動」を思い出のように回想する世の中の変化に対し、当時の美しい歌をもう一度歌ってみようと詠ずる。小説家ゴン・ジヨンの作品、『サバ』の最後のページを閉じた後にすぐ歌詞を書いたと彼は言う。
李ジョンヨルは、「我々が覚えている画一的なフォークから脱し、時代と疎通できるフォークを盛り込めたいと思った。フォークはジャンルよりその精神が重要だ」と話した。彼の言うフォーク精神とは、世の中に向かって堂々と言いたいことを言うことだ。
ただ、タイトル曲「愛しています」(李ジェギョン作詞、金ハンニョン作曲)は李ジョンヨルらしくない。起承転結の構成や伴奏と編曲が、一般のバラード歌手たちと違わない。アルバム収録曲の構成からみれば、この曲は多少浮いている。
本音を聞いてみた。
「その歌も新しい試みだ。ただ、タイトル曲に選んだのは、現実的には放送を通じて歌を知らせなければならないための不可避だった。その限界を知っていながらもあきらめがたかった。『愛しています』は、私の音楽世界にファンを引き込ませるためのドアに過ぎない。」
李ジョンヨルは、次のアルバムではソウルやブルースなどの黒人音楽に挑戦する計画だ。個人的にも気に入っていて、大体の部分はすでに準備が終わっているという。
heo@donga.com