「学閥より可能性のほうが大切です」
厳しい就職難が続いている中、地方大学出身者は「学閥」というもう一つの壁に突き当たり、二重苦を強いられている。しかし、地方大学生の「可能性」を見込んで積極的に採用し、成功を成し遂げた企業のオーナーがおり、話題を集めている。
主人公は、デアグループの成完鍾(ソン・ワンジョン、52)会長。
系列会社7社の中堅企業を経営する成会長は、地方大学を出ていない。にもかかわらず、1980年親企業のデア建設を買収した時から、地方大学生を積極的に採用する人事方針をとってきた。このため、デアグループの正社員約1200人のうち70%が地方大学を卒業している。今年の初め採用した90人の新入社員も、やはり地方大学出身者が70%以上を占めている。
成会長は「地方大学生を採用するのは、彼らが持っている仕事に対する熱意や意欲、会社に対する高い献身度などが、企業に実質的な利益をもたらしてくれると判断したからだ」と述べた。
事業を始めた当時は、中小企業に就職しようという名門大学の卒業生がおらず、「仕方なく」地方大学生を採用したが、年間売上が1兆ウォンをはるかに超える現在、むしろ地方大学生を探して採用しているという。
このような成会長の考えについて、反対する人も多かった。「人脈に左右されやすい韓国社会の現実に適していない」と忠告する人もいたし、「競争社会で、他の企業との格差は大きくなるばかりだ」と心配する人も多かった。
しかし、地方大学生が中心となっている成会長の企業は、「見てみろ」といわんばかりに、20年間成長を続け、堅実な中堅企業に定着した。
成会長が地方大学出身の職員の「真価」を確認したのは、1997年の通貨危機の時だった。全国にリストラの嵐が吹き荒れたが、当時、デアグループは約1000人の職員のうち80人しか解雇しなかった。職員が進んでボーナス400%を返上し、会社を救うために努力した。
「その時、うちの会社には無駄な社員が一人もいないということがわかった」。成会長は自分の人事方針が会社の成功秘訣だと、自信を持って話す。
忠清南道瑞山(チュンチョンナムド・ソサン)で生まれた成会長は、厳しい家庭事情から、小学校を卒業するとすぐに仕事を始めた。昼は新聞配達、薬局のお使いなど、手当たり次第仕事をし、夜は勉強に励んだ。こうした努力の末、中学卒業検定試験に合格、高校をかろうじて卒業した。そして、土方や運輸仲介業などで事業に必要な資金を集め、事業家に変身した。
「大学卒業証書」の無かった成会長は、30代後半にまた勉強を始め、米パシフィック・ウェスタン大学経営学科を卒業し、漢陽(ハンヤン)大学経営大学院を卒業した。
「貧しくて勉強できない悲しさは誰よりもよく知っている」という成会長は、1991年瑞山奨学財団を立ち上げ、経済事情の厳しい学生を支援しようと努力している。現在まで、約100億ウォンを出資して設立した奨学財団の支援を受けた学生だけでも3100人にのぼる。こうした努力が認められ、11日、政府から国民勲章牡丹賞を受賞した。
「現実として学閥を無視することはできないでしょう。しかし、個々人に潜在してる可能性を引き出すのは、相手に対する信頼です」
成会長は、若者の真の価値は「現実の点数」より「任された仕事に対する熱意」や「将来の可能性」にあると、改めて強調した。
孫曉林 aryssong@donga.com