企業が非常経営に備え、数兆ウォン台の現金性資産を競って備蓄している。
北朝鮮の核問題と米−イラク戦争など結果の予想ができない「視界ゼロ」の状況が長期化していることから、各企業は年初に立てた投資計画を保留し、流動性確保に乗り出した。
内需だけでなく輸出景気まで落ち込むにつれ、企業は現金確保をより急いでいる様相だ。
▲現金を確保しろ〓三星(サムスン)電子、現代(ヒョンデ)自動車、浦項(ポハン)製鉄など業種代表企業が備蓄した現金性資産(現金と現金と同一視される短期金融商品、有価証券など)の規模は数兆ウォン台に及ぶと推定される。
現金性資産は設備投資と負債償還など正常な企業活動に使われた残余金で、用途はこれといって決まってない。ほとんどが「非常用待機資金」となるわけだ。
大半の企業の現金性資産は、去年の業績が良好であったのに加え、今年の経営環境の不透明さで、一部投資が保留されたため、過去最大の規模になった。
三星電子が備蓄した現金性資産は昨年末現在、7兆4000億ウォン台にのぼる。01年末に比べ、約4兆6000億ウォンの急増だ。現代自動車は去年、約1兆4000億ウォンを追加し、4兆3000億ウォン台まで増えた。起亜(キア)自動車と浦項製鉄はそれぞれ1兆ウォン台で、SKテレコムと現代モビスは5000億ウォン台を上回ると推定される。
三星電子のチュ・ウシク常務は、「マイクロソフト、シスコなど世界の超一流企業も、今後の景気変動と潜在リスクに備えて、売上げの約20%を現金性資産で準備している」と話した。
▲収益より安定が優先〓現金性資産の大半は、すぐに現金化が可能な短期金融商品で運用されている。三星電子の現金性資産は昨年末現在、△現金1兆4093億ウォン△短期金融商品4兆2730億ウォン△有価証券1兆7448億ウォンにのぼる。当座と普通預金、随時入出金式預金(MMDA)、マネーマーケットファンド(MMF)、受益証券、1年未満の定期預金、産業金融債券などが主な運用対象だ。
浦項製鉄も1兆2800億ウォンの現金性資産のうち、MMFと公社債型受益証券に9800億ウォン、預金(定期預金+外貨預金)2000億ウォン、債券が1000億ウォンとなっている。
現代自動車の関係者は、「収益性がたいへん低くて悩んでいるのは事実だが、『非常時』に備えて安定的な企業活動を維持するため、安定運用は不可避だ」と言った。
▲現金確保には理由がある〓浦項製鉄と現代自動車は今年度の営業利益だけで、それぞれ1兆2000億ウォンと1兆274億ウォンの負債を償還する計画だ。また、三星電子も今年上半期に予定されていた半導体とLCDラインの投資資金を、去年の営業利益の中から一部を当てる予定だ。
三星電子のチュ常務は、「半導体産業の場合、製品のサイクルを一度逃せばお終いだ。業界を先導し、後発業者との格差を広げるためには、適正規模の現金資産が必ず必要だ」と強調した。
李康雲 kwoon90@donga.com