国際法上、戦争を始める方法には、宣戦布告(Declaration of War)と最後通牒(Ultimatum)の2つがある。最後通牒とは、相手国家に、最終期限を定めて自国の要求事項を通告することで、「条件つき宣戦布告」といえる。いかなる場合でも戦争をしようとすれば、まず相手に「事前警告」をしなければならない。しかし、法よりこぶしが先行する国際社会で、このような「ルール」は無視されるのが常である。戦時法を規定した1907年のハーグ会議後にも、宣戦布告や最後通牒が省略され、直ちに戦争に突入した歴史的事例は無数にある。
◆なかでも第2次世界大戦時に、ドイツ、日本、イタリアは戦時法を守らなかった。ドイツがポーランド(39年)やデンマー ク・ノルウェー(40年)、そしてソ連(41年)を侵攻した際、いずれも戦争宣言をせず、あるいは事後に宣戦布告をしただけだ。日本の真珠湾攻撃(41年)も同様である。イタリアもまた、事前警告なしにエチオピア(35年)とアルバニア(39年)を攻撃した。このような「事前警告のない戦争」は、軍事戦略の上で先制攻撃の大切さが強調されて増加してきた。1945年から1974年の間で全世界で発生した主な戦争のうち、116が宣戦布告のない戦争だったという調査結果があるほどだ。
◆ブッシュ米大統領が近く最後通牒をすると伝えられ、イラク戦争が目と鼻の先に迫っている。先週末には、米英、スペインの首脳らが一同に会して戦争意志を確認し、ワシントンは、いつでも戦時非常体制に突入できる態勢である。米国が、今月初めにすでに公開した最後通牒の内容が、イラクの無条件の武装解除ならびにフセインの追放、そして体制交代であっただけに、米国とイラク両国の妥協の可能性は、皆無のようだ。このため国際金相場が急騰するなど、戦争が世界経済におよぼす影響も日増しに高まっている。
◆戦争を始める時、先制攻撃の効果をあきらめてまで事前警告をする理由は、大義名分を得るためであることが大半である。今回の戦争も、米国はイラク攻撃に対する国連安全保障理事会の支持決議を得るために東奔西走し、最後まで事前通告ルールを固持した。しかし、このような努力がどれほど成功をしたかは疑問である。フランス、ドイツ、ロシアの反対に加え、国内外で拡散する反戦世論など、米国はいま内外で逆風を受けている状況である。「イラクの次は北朝鮮」という言葉が出ている状況で、今回の事態の推移を見守らなければならない韓国国民の心も穏やかではない。
宋文弘(ソン・ムンホン)論説委員 songmh@donga.com