江南(カンナム)、江北(カンブク)そして地方。
「人生には二つの悲劇がある。一つはあなたが心の中で切に望んでいることを手にすることができないことであり、もう一つはそれを手にすることだ」。これはオスカー・ワイルドの言葉だ。ある新婚夫婦がネット上で次のような相談をした。「持ち家は後にしてその前に再建築マンションを買うつもりです。もちろん1年内に売るつもりです。いくら政府が規制するとしても、ある期間待てば再建築マンションは急騰するだろうというのが、私たち2人の考えです。有望な所を1ヵ所だけ教えてください」。
◆去年今頃の話だ。01年末から始まった江南圏のマンション価格の急騰を見守りながら、江北に住む人々は深刻な剥奪感を吐露した。韓国銀行の朴昇(パク・スン)総裁までそうした事実を認めたほどだ。それで私的な場では「今からでも江南に移した方がいい」と話したこともある。しかし、それは僅かの資金で解決できる簡単な問題ではない。そのため、ソウルの江南と江北は同じ都市ではあるものの、同じ都市ではない。職場の関係で地方に移って来たが、地方の人々のソウルのマンション価格に対する見方は「高嶺の花」のレベルだった。江北の外れにどんな安物のマンションを持っていたとしても、それは厳然たる「ソウルのマンション」であるため、そうしたマンションを1軒でも持っていれば、地方の基準では相当な金持ちではないかと思われるのだ。ソウルのマンションが無条件高いと思う地方の人々は、ソウル外れのマンション価格が地方の一番高いマンションよりは安いということをあまり信じようとしない。地方での短い生活経験は大韓民国が江南と江北、それと地方で構成されているということを実感させる。
◆参加型政府の次官級以上の財産公開によると、大統領の財産は2億ウォン程度しかない。江南地域にある10坪の再建築マンションも買えないほどのお金だ。しかし大統領はネット上で相談をした新婚夫婦とは違い、再建築マンションを「切に」望まないだろう。それでは一般の人々はどうだろう。新婚夫婦より優るとも劣らないだろう。 再建築マンションを買っても、それも悲劇になるというオスカー・ワイルドの言葉は「笑い話」に過ぎない。では、地方の人々はどうだろうか。たぶん、笑って答えないだろう。逹観ではなく「巨大なブラックホール」、ソウルに対する諦めのためだ。
◆南北関係さえうまく行けば、大韓民国はうまく行くだろうか。そんなこともできる。しかしマンション価格のことだけで新婚夫婦まで「投資的な投機者」にしてしまう。江北を含む巨大ソウルだけが 金持ちになっていき、地方はまるで「他の国」のようになってしまったこの現実をどうするつもりなのか。
金ギホン客員論説委員(釜山大学教授) gkim@pusan.ac.kr