シンガポール政府は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の拡散を防ぐために、感染が疑われる住民2890人(4月30日現在)に対して、自宅での待機など隔離措置を取っている。
隔離対象者が出るたびに、警備会社はその人の家の内部に監視カメラを設置する。保健当局は、随時、隔離対象者に電話をかけてカメラを作動するように求める一方、人の姿が警備会社のモニターによく映っているかを確認する。
当局からの電話に続けて出ないか、カメラ作動を拒否するなどの非協力的な対象者には、手首に発信装置を強制的に取り付ける。家の外に出ると、直ちに内務省に通報され、罰金が課せられる。違反行為が続けば逮捕するとまで、当局は警告している。
SARSの波紋が長期化するにつれ、東アジア各国ではSARS感染の疑いがあるという理由だけで、こうした多様な形の人権侵害が起きていると、朝日新聞が2日付で報じた。ジョージ・オーウェルが警告した「監視社会」に対する恐怖が、SARSによって21世紀に現実に現われているということだ。
シンガポールの場合、隔離対象者は家での一挙手一投足が警備会社のモニターを通じて露出している。当局のこうした措置に対して「度が過ぎる」という批判もあるが、「これ以上の感染を防ぐためには、厳しく対応するしかない」という意見が大勢だ。
タイ政府は中国、香港など感染地域を旅行して帰国した人に、潜伏期間である10日間は家やホテルで待機するように義務づけている。
この措置が施行されてから、保健当局は職場仲間の違反事実を知らせる届け出を数件受け付けた。ある会社員は「会社の上司が感染地域から帰って来て間もないのに、家を出て活動している」と「密告」した。
中国の内モンゴル自治区の空港当局は、感染者の航空機搭乗を届け出た住民に500〜3000人民元の謝礼金を与えると発表した。
一部の住民たちは、体の調子が少しでも悪くなれば、当局から職権で隔離措置を取られるのではと心配している。上海のホテルに入ろうとすれば、入口で体温を測らなければならないが、もし高熱と判定されれば直ちに専門医療施設に強制的に移送される。
人権侵害を憂慮して愼重な態度を示してきた日本も、感染推定者と判明された場合、その人が最近泊まった宿泊施設や交通手段などを公表する方針だ。
朴元在 parkwj@donga.com