情報化時代にSARS(重症急性呼吸器症候群)より恐ろしいものは情報伝染病(information endemic)。生物学的な伝染病は人の命を奪うことで済むが、情報伝染病はあっという間に社会、経済的な破局をもたらしかねないからだ。
情報のソースを探る会社であるインテルブリッジ(Intellibridge)社のデイビッド・ロスコフ会長は11日、米紙ワシントンポストへの寄稿文を通じ「情報伝染病」を「インフォデミック(infordemic)」と名づけた。次はこの文章の要約。
インフォデミックは本物の伝染病と変わりがない。疫学的な原因があり、識別可能な症状があり、よく知られている伝染媒介体、そして治療薬もある。単なるうわさの拡散ではない。主流メディアと専門メディア、さらにインターネットサイトや携帯電話、文字メッセージ、ポケベル、ファックス、電子メールのような非公式メディアまでにかかわる複合的な現象だ。この病気は、いったん発病すると、一気に大陸を越えて伝染する。
SARSだけをとっても、これまで知られている被害は7000人あまりの感染と500人あまりの死亡。これは毎年喉に異物が詰って窒息死する4700人の米国人の数に比べると、さほど多い数でもない。しかし、SARSの恐怖はアジア経済をどん底に落しこんでいる。アジア開発銀行は、9月までSARSが続けばアジアだけで300億ドルの経済的な損失が発生するだろうと予測した。ウォール街の一部の専門家たちは、中国が通貨を切り下げるだろうと展望している。
テロの恐怖もそうだ。昨年は米国史上、テロの恐怖が一番高まっていたが、国務省によると02年は1969年以来もっともテロの少ない年だった。イラク戦争のあおりを受け、地中海の旅行にストップがかかったことや、エンロン事態で市場が動揺したのも、インフォデミックの威力を裏付ける。
インフォデミックの原因と治療はコインの両面だ。中国政府は、SARSの発生初期に発病の事実を覆い隠すのに汲々としていた。そのため、中国政府がSARSは恐れるべきものではないと発表すると、かえってSARSへの恐怖をかきたてる格好となった。
信頼が特効薬だ。未確認の情報が出まわる前に、水際で食い止める早期警報体制を稼動して、すぐさまソースを見出してすばやく確認済みの情報を発信することこそが、インフォデミックを防ぐ道だ。
洪銀澤 euntack@donga.com