報酬や事務室もない上、公式的な権限や責任もない名ばかりの大統領特別補佐官が新たに10人程度生まれるというから、その後遺症と副作用が懸念される。「盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は100人ぐらいを(任命)しようとしているようだ」という柳寅泰(ユ・インテ)大統領政務首席秘書官の言葉は、その心配をさらに煽る。こういう形で大統領特補を量産したのは前例のないことだ。
大統領府は無報酬の名誉職であることを強調しているが、それで何の問題も生じないとは期待できないだろう。いわゆる「名刺上の特補」に与えられた「大統領と自由に会い意見を述べられる特権」は、韓国の権力文化の下ではどんな公式的な権限よりも莫大な権力の根源になりうるためだ。過去の政権が、大統領の特補を極めて制限してきたのもその所以である。
依然として、権限のある人にはさまざまなお願い事が舞い込んでくる。権力はあるけれど公式的な責任がない人であればなおさらだ。金大中(キム・デジュン)政権下で、さまざまな不祥事で問題となった「実力者」の中には、名刺的な特補のようにポストさえない人も少なくなかった。ほとんどが盧大統領のかつてからの側近である今回の特補内定者たちも、はたして周りの誘惑を断ることができるか疑問である。
韓国の政治状況で車両も提供されない彼らが、いかにして自分たちの「品位」を維持するかを考えると、不吉な予感は現実味を帯びてしまう。一部での指摘のように、名ばかりの特補が、来年の総選挙を念頭において、出馬予想者や希望者の知名度を高めるために与えられたものだとすれば、彼らには品位維持のための費用ばかりか、政治資金までもが負担になるだろう。
屋上屋式のポスト作りや大統領府組織の肥大化による国政の混乱も問題だ。名刺特補は権限も責任もないため、かえって声を高める可能性がある。また、大統領府の肥大化は、内閣の矮小化を意味する。大統領との親しい関係や個人的な力量によっては、長官・次官や大統領首席秘書官を上回る権力を持つ、名ばかりの特補が出てくる可能性もある。
「特補政治」は長期的に見ると、側近政治や非民主的な政治の芽を育てることにもなり得る。今にでも「名刺特補」の内定を撤回するか、それとも本当に必要な場合には任命を最小限に止めるのが望ましい。