23日封切りの「ファー・フロム・ヘブン(Far from Heaven=日本語題名:エデンより彼方に)」を演出したトッド・ヘインズは米国インディーズ映画の旗手に挙げられる監督だ。「ファー…」は昨年、米インディーズ映画の代表格「インディペンデント・スピリット」の授賞式で最優秀作品賞、監督賞、撮影賞を受賞した。ニューヨーク批評家協会からは「2002年最高の映画」に選ばれた。この映画で、スタイルの実験とテーマーに関する悩みを滑らかに結び付けたヘインズ監督を書面でインタービューした。
—「ファー…」は1950年代を時代背景に、同性愛と人種差別を題材にしている。題材が重過ぎるのでは、という評価もある。映画を通じて差別に対する批判という社会的な発言を試みたのか?
「私が描こうとしたのは、平凡な女性の話だ。キャシー(ジュリアン・ムーア)の天国のような生活が崩壊していく過程と、その中での彼女の葛藤と彼女が下さざるをえなかった決断を描こうとした。夫の同性愛や黒人庭園師レイモンドとの恋は、キャシーの物語を繰り広げる過程で加味したネタだ。それによって社会的な現実性を与えたわけではあるが、私が究極的に語ろうとした目標でない」。
—この映画の華麗な色彩やカメラの動きは、メロドラマの極大化を狙ったものとみられる。しかしながら、人物たちの動きは情熱的というよりは柔らかい。俳優たちに、そのように対比される演技を要求したのか?
「露骨に感情が先走る映画を作りたくはなかった。俳優たちに『ファー…』が情熱的なメロドラマの映画であることを忘れて演技してほしいと注文した」。
—主演のジュリアン・ムーアのどう言うところを買ってキャスティングしたのか?
「彼女は極端な状況下でも、高ぶった感情を直接的に表すことがない。そういう点で、シナリオを書く段階から彼女を念頭に置いていた。内面の不安と悲しみを完璧に表現できる女優は、彼女以外にないと思ったし、私の選択は正しかったと思っている」
—映画では、今は古いジャンルとされているメロドラマの表現様式が決して古くないということを見せ付けようとしているように思える。メロドラマの様式を通して狙ったのは何なのか?
「ダグラス・サーク監督に代表される50年代のメロドラマは現代の感性で見ても少しも不足感がない。保守的な時代を生きていく女性が到達せざるを得ない数々の結論を描くには、50年代のメロドラマ的な話し方が最適だと考える」。
—次の映画はボブ・ディランに関する話だと聞いているが。
「ボブ・ディランは『彼について予測できることは、恐らく予測が不可能であるという事実だけだろう』という言葉があるように、一つの単語や一文章で位置づけるには多様な意味を併せ持っているアーチストだ。彼は偉大なミュージシャンであり、時代的な葛藤と抵抗、自由の精神を代弁するアイコンだ。彼の素顔を描き出してみたい」。
金熹暻 susanna@donga.com