ある政治家が自らを「一匹鮭」と呼んだ。与党・民主党の宋錫贊(ソン・ソクチャン)議員だ。彼は2年前、民主党が所属議員4人を自民連に「貸した時」、党を移って金大中(キム・デジュン)前大統領に「私は一匹鮭になって…」という忠誠の手紙を書いた。そして彼は、その後鮭のように民主党に舞い戻った。そんな彼が数日前、ブッシュ米大統領を「悪の化身」と呼んだ。「世界平和の守護者の仮面をかぶった悪の化身によって、人類文化の発祥地が破壊される姿を目の当たりにしなければならなかった」と一喝した彼は、さらに「韓半島で戦争を抑止するには、我々も核兵器を保有しなければならない」と声を高めた。
◆宋議員は昨年2月、ブッシュ大統領の訪韓の前日にも同様の表現を書いたことがある。彼は世の中の人々が自分を「反米確信犯」と見ることを望んでいるようだ。しかし、同盟国の国家元首を罵倒することが癖になっては困る。「鮭一匹」が川(国内)で泥水を飛ばすことは我慢できても、海(国際社会)であちこちで衝突するのを放っておいては、国の体面を壊すことはもとより、国益を害することもあり得るからだ。「我々も核兵器を持とう」という彼の分別のない主張が、韓国与党内に北朝鮮の核を認める流れがあると、国際社会で拡大解釈されはしないか心配だ。
◆政治という職業では「言葉」が重要な説得手段である。しかし、その言葉に最小限の格式もなければ、政治がまともにできるはずがない。韓国政治が国民に背を向けられるのは、政治家が日頃から口にする放言のせいだろう。確かに大統領からして低俗な言葉を口にする国で、国会議員の低質発言ぐらいは、新しいことではないのかもしれない。しかしこのままでは、激怒した国民が政治家を一気に減らしてしまおうと言わないとも限らない。
◆言葉の格式よりも重要なことは、言葉が伝えようとするメッセージだ。「話が下手な」韓国の政治家の中で、真実を盛り込んだ言葉で国民を感動させる人が何人いるかと考えると憂うつになる。英国の名首相チャーチルは、国家が戦乱の危機に直面した時、嘆く代わりに国民に「血と汗と涙」を求めて国を救った。政治家の口から常識以下の内容があるべき品格も無視した状態で溢れる韓国の政界で、チャーチルのような人物の登場を望むことは夢なのだろうか。
宋文弘(ソン・ムンホン)論説委員
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