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[オピニオン]ハリー・ポッターの魔法

Posted June. 23, 2003 22:00,   

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20日夜から21日の早朝にかけて米国、英国、豪州では「ちびっこ魔法使い」たちが、本屋の前で徹夜のパーティーを繰り広げた。21日の午前零時を期しての発売となった、ハリー・ポッターシリーズの第5弾「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を買い求めるためだった。初日、米国で500万冊の売れ行きをみせたこの本の熱気は、わが国でも例外ではなかった。教保(キョボ)文庫は、予約で注文した顧客が21日に宅配で受け取れるよう、細心の注意を払って事前発送作業を展開したほか、店頭販売分の500冊は発売から2日で売り切れた。ここまで来ると気になるのが当たり前。ハリー・ポッターっていったいどんな本?

◆シリーズ第5弾は殺人免許剥奪の危機にさらされた(映画)007ジェームズ・ボンドのように始まる。自分を執拗に苛めるマグル伯母さんの家で夏休みを過ごしていたハリーが、耐えかねた末魔法を使い、その罰として裁判を受けることになる。15になったハリーは、もはや子どもではない。善と悪は、おとぎ話でのようにはっきりと見えてこない。ティーンエージャーなら誰もが経験するホルモンのアンバランスの中で、ハリーはファーストキスを経験し、世の中を救わなければならないという使命感と、平凡なティーンエージャーらしい挫折の中でさ迷ったりもする。家系の秘密と代々受け継がれてきた復讐と裏切り、身内の死と犠牲に怒り、また教訓を得ながら、ハリーは次第に大人になっていく。

◆ハリー・ポッターが200余りの国々で55の言語に翻訳されるほど、大人子どもを問わず世界中の人々に愛されている理由もそこにある。ハリーは魔法使いの血筋を受け継いではいるが、スーパーマンではない。魔法も一度で身につけることはできない。自尊心を傷つけたり、嫉妬に燃える時もあるが、自分を理解してくれる友達がいるので心強い。つまり、ハリーもまた欠点を持つ人間であるという意味では、全ての読者が「ハリー・ポッターは自分自身」だと思うということだ。ハリーが、孤児としていびられながら成長したものの、運命に立ち向かいながら自分の力を見出して行くという点では、神話の中の英雄に酷似している。児童心理学者のブルーノ・べテルハイム氏は、こうした特徴が子どもを成長させ、内面の傷を癒す魔術的な力を発揮すると語っている。

◆ハリー・ポッターの著者ジョアン・K・ローリングの、シンデレラのようなサクセスストーリーも、読者を魅了させる。シリーズ第1作目を書いていた9年前まで、子どものミルク代にも困っていたが、現在は4億5000万ドルを稼ぎ、英国女王よりも金持ちになった。そんな中でも不治の病で闘病生活を送る子供たちには、電話で本のストーリーを知らせ、少しでも長く生き延びられるような心遣いをみせるなど、暖かい心の持ち主だ。何といっても、彼女が私たち読者にかけた最高の魔法は、本を読む喜びを与えてくれたということだろう。映像世代の子供たちが夜を徹して本を待つくらいなら、歴史に残る作家としての資格は十分あるだろう。

金順徳(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com