世界初の新型肺炎SARSの患者は、昨年11月中旬に、中国広東省で発生した。広東で変種の肺炎が急速に広がり、305人の患者が発生して5人が死んだという報告書が、世界保健機関(WHO)に公式に届けられたのは、2月11日。中国政府は、3ヵ月近くも新種の伝染病の発生事実を隠し、高い代価を支払った。WHOが24日、北京に対する渡航自粛勧告を解除したが、国際社会で信頼を失った中国が、SARS後遺症から脱するには長い時間を要しそうだ。SARSは、アジア地域だけでも160億ドルの経済的損失をもたらした。
◆中国は、80年代から市場経済路線を採択し鮮やかな経済発展を成し遂げたが、政治は共産党一党独裁体制であり、言論統制が厳しい。広東でSARSが猛威を振るっている間、北京政府は、記事が一文も報道されないように言論を統制した。情報統制によって、国民は予防措置を取る機会が遮断され、SARS撲滅のための国際社会の協力が遅れた。中国であった60年代の大躍進運動の期間に3000万人が命を失った大飢きんも、情報統制が原因だった。毛沢東が集団農場制度を導入した後に穀物の収獲が減少した事実を隠蔽(いんぺい)し誇張報告が横行したため、正しく対処する機会を失ったのだ。
◆独裁国家でこそ動員可能な強圧的な手段で、SARSを効率的に防御した国もある。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は外国から入国する内・外国人は、身分を問わず平壌(ピョンヤン)から1時間の距離にある安州清川江(アンジュ・チョンチョンガン)ホテルに10日間隔離した。世界食糧計画(WFP)の職員は、10日間このホテルに閉じ込められ、毎日2度体温検査を受けたと証言した。国際会議に出席して帰国した北朝鮮外務省の職員たちも、一般人と同様に隔離生活をしたという。基本的な医療施設と医薬品の不足した北朝鮮は、SARSに対して国家をあげて恐れていたようだ。
◆中国では、経済や健康の統計が政治的意図によって操作されており、報道人や学者が正確なデータを収集する行為は、国家機密漏洩罪で処罰される。中国のSARS初期対応の失敗は、国際化した市場経済と調和して作動できない硬直した政治体制にかなり責任がある。旧ソ連のゴルバチョフ元大統領は、チェルノブイリ原子力発電所の事故をきっかけにソビエト体制の非能率を悟り、改革開放を始めた。生命倫理学者エマニュエル氏は、「ソ連がチェルノブイリから学んだように、中国もSARSから教訓を得なければならない」と指摘した。このレベルにも至らない北朝鮮は論外だろうが。
黄鎬澤(ファン・ホテク)論説委員 hthwang@donga.com