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[オピニオン]ブッシュマン

Posted July. 07, 2003 21:58,   

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1980年に製作された映画『ブッシュマン』が世界的な興行に成功したのは、現代人とは全くかけ離れた未開部族の暮らし方が、文明社会の好奇心を刺激したからだろう。突然空から降ってきたコーラの空きビンを、神からの贈り物だと信じて奪い合い、それが原因で混乱に陥ってしまったブッシュマンたちの単純さが、文明社会の人々に清涼剤の役割を果たしたと言えるだろうか。自然の中に溶け込んでいるブッシュマンの暮らしを見ながら、現代人は一度ぐらい自分の人生を振返ったことだろう。この映画の主役として出演した「二カウ」は、その後どうしたのだろうか。一時期、世界的な「著名人」として脚光を浴びた彼は、10年あまりの文明生活を送った末、1990年代の初め、帰郷とともに人々の記憶から遠ざかった。

◆帝国主義時代、ヨーロッパ人がアフリカに殺到しはじめ、ブッシュマンは惨めな運命をたどることになる。1810年、20才になったばかりの一人のブッシュマンの女性がヨーロッパに連れて行かれ、5年間裸にされて檻の中に閉じ込められたまま、ロンドンとパリの酒場でさらされ、男たちの覗きの対象にさせられた挙句に死亡した。この女性の遺体は脳と生殖器が取り除かれたまま「サラ・バトマン」という名で、フランスの人類学博物館に所蔵されていたが、ようやく昨年返還されて故郷の川辺に葬られた。スペインのバニョレス市にある自然史博物館が約100年間ブッシュマンの剥製を展示していたが、アフリカ諸国の抗議を受け、取り払ったのも1997年になってからのことである。かつて、ヨーロッパ人はブッシュマンを人間として扱っていなかったのだ。

◆辛い歴史にもかかわらず、カラハリ砂漠一帯に住むブッシュマンは、コンゴ盆地のピグミー族とともに「最も古い時代に枝分かれた現生人類」であるという事実が、最近の研究結果から明らかになった。人類学者らは早くからブッシュマンを「生きている化石」として研究していた。狩猟と採集で暮らす彼らの生活様式が、人間が定着生活を送る前の姿と似通っているからだ。ブッシュマンは、砂漠の中で長い間水なしでも生きられる、彼らならではの知識を持っていた。ところがそれも、地下水を利用した白人によって、彼らは砂漠から追い出されてしまった。現在、およそ5万人のブッシュマンが、幾つもの定着村に散らばって暮らしている。

◆映画の主人公二カウさんが、このほど故郷で亡くなったという。1991年、映画のプロモーションで韓国を訪れたこともある彼は、晩年のおよそ10年間を本来のブッシュマンに戻って暮らしていた。文明の味がいくら甘いとは言え、自然の中での暮らしを忘れられなかったのだろう。自然の生命力を希求するのは、文明社会の人も同じだ。自分の年齢すら明らかにしないまま死んで行ったブッシュマン・二カウさんの生涯は、週末になると自然を求めて旅立つ文明社会の人間のそれよりも不幸なものだったのだろうか。スクリーンの中の二カウさんのあどけない笑顔を思い浮かべながら、余計なことを考えてみた。

金尚永(キム・サンヨン)論説委員 youngkim@donga.com