公正取引委員会(公取委)の企業政策と大統領府の労使政策がもたらす政策效果が衝突する可能性が高いという指摘が出ている。特に、それぞれが強調している企業透明性と雇用安定という政策目標の中核が、どちらも損なわれかねないという懸念も少なくない。
▲株主利益の最優先VS労組権利の拡大〓公取委が推進中の現政権の企業政策は、所有構造の透明性と株主利益の保護に要約される。英米型企業支配構造をモデルにしている。
姜哲圭(カン・チョルギュ)公取委員長は先月19日、外部での講演で「英米型と日独型の企業モデルのうち、株主総会や理事会など会社法上の機構が実質的に意思決定を行う英米型の長所を取り入れるべきだ」と主張した。
英米型企業モデルの特徴は△株主利益の絶対的優先△企業透明性の確保△利潤の極大化 △労働者解雇と雇用の柔軟性△活発な買収合併(M&A)などだ。
一方、李廷雨(イ・ジョンウ)大統領政策室長は、今月3日、労働組合が企業経営に参加する案を説明した。これと関連して李室長は「(労組に対する企業の)経営情報提供はもちろん、投資戦略や会社合併など戦略的な意思決定の過程も(企業と労組の)協議事項だ」と話した。
これはオランダの実際の労使モデルとは若干違う。しかし、労組が賃金引き上げ要求を自制する代わりに企業経営に参加するできる権利を保障してもらう点でオランダのモデルに近い。
▲政策の混線が労使関係の悪化をもたらす〓問題は、一方では株主の権利を保護する方向に企業構造改革を進める反面、もう一方では株主の利益とは相反しかねない労組権利の強化を進める方向で労使関係を再確立しようとしていることだ。
このため、専門家の間では当初目指していた両部門の改革目標が、どちらもだめになりかねないという憂慮が広がっている。
ソウル大学法学部の金建植(キム・コンシク)教授は「労働者が経営に参加するようになれば、企業は意図的に情報伝達ルーツを遮断するようになる。これは結局、企業の透明性を阻害するため、現行の企業政策とぶつかる」と話した。
さらに企業実績を評価する基準も曖昧になる。労働者福祉と権利増進のため、市場環境に合う企業活動ができなくなる場合もあるからだ。とくに、景気低迷期にはこうした労使関係が企業の足を引っ張る可能性もある。実際オランダは、今年の経済成長率が1982年以後初めてマイナスに転落する可能性が高いとみられている。昨年の外国人投資も前年度に比べて43%も激減した。
雇用そのものが減少する可能性も高い。高麗(コリョ)大学経営学部の張世進(チャン・セジン)教授は「労組の経営参加が活性化すれば、雇用の柔軟性が落ちるようになる。労働者の解雇が難しければ、企業は最初から雇用を減らす」と強調した。
公取委の当局者は私見であることを前提に「企業構造と労使関係はお互いに切り離される性質の問題ではない。英米型企業構造の下では欧州型の労使関係は難しい」と述べた。
高其呈 koh@donga.com