野党のハンナラ党が提出して、国会法制司法委員会(法司委)を通過し、大統領府が受け入れる意志を明らかにした新特別検察官(特検)法修正案が、きのう国会本会議を前に突然破棄された。その代わりに、ハンナラ党は、当初の原案よりも捜査対象をより拡大した再修正案を作るなど、政局が激しい渦の中に飲み込まれている。今回の事態は、基本的に与・野党の複雑なお家事情から始まったという点で、その質がより悪い。
国民的疑惑を受けている対北送金事件の真相は、一つ残らず究明されなければならないという本紙の基調には変わりない。関連不正疑惑で捜査対象を限定した修正案に対しても、国民は疑問を持っている。にもかかわらず、大統領府と与党民主党に修正案を受け入れるように求めたことは、ただでさえ大変な時期に、政局の硬直化による国力消耗を阻止するという趣旨だった。
しかしハンナラ党が、対北送金事件ならびに関連不正疑惑のうえに、北朝鮮の起爆実験の疑惑まで盛り込まれた再修正案を作成したことで、このような趣旨は色あせた。ハンナラ党の崔秉烈(チェ・ビョンリョル)代表は、金大中(キム・デジュン)政府が北朝鮮の起爆実験を知りながらも対北朝鮮支援を続けたことに、免罪符を与えることはできないとして態度を変えたが、その土台には、捜査対象を縮小した修正案に対する党内の反発をなだめようとする意図があるようだ。
崔代表の変更論を認めるとしても、ハンナラ党単独で法司委を通過させた修正案を自ら破棄して、政治行為の信頼や予測可能性を壊したことは、多数党の責任ある姿勢ではない。朴寛用(パク・グァンヨン)国会議長が、与野党間の議事日程の合意が成立しなければ、再修正案を本会議に上程しないと言ったことも、これを意識しためだと思われる。
無条件に特検はだめだとする民主党が、その口実を提供した点も指摘しなければならない。ハンナラ党であれ民主党であれ、結局は大統領にすべての負担を押しつけようというのではないか。大統領が拒否権を行使する方向に持ち込もうとする暗黙的な合意はないか、という疑念まで浮かぶ。特検論議は口実にすぎず、内心は「黒い計算」だけをしている与野党いずれも、政局破綻の共犯という非難を免れがたい。