政権与党の代表に対する逮捕同意要求書が提出されるという史上初の事態は、実は予想されたことだった。与党民主党の鄭大哲(チョン・デチョル)代表が3回も召喚に応じない以上、検察としても他に選択肢がなかったはずだ。政界と検察が仕方なく土壇場になって衝突する様相になったが、まだ道がなくはない。
鄭代表が今すぐ検察に出頭するのが最善だ。今月末までに、という具合に期限を決める必要もない。鄭代表が捜査に積極的に協力するならば、鄭代表の身柄拘束について検察も慎重に検討してみる必要がある。政権党の代表ではない一般人でも逃走や証拠いん滅の可能性がなければ、在宅起訴が原則ではないか。
政界が正常な手続きを踏んで、逮捕同意案を処理するのが次善の策だ。いずれにせよ逮捕同意案が処理されてこそ、法的な問題が解決できるからだ。しかし、すでによくない兆しがあらわれている。与野党を問わず、「他人ごとではない」と同病相憐れみを感じる議員たちが多く、逮捕同意案を棚上げにしてしまう可能性もなくない。
ハンナラ党の洪思鄹(ホン・サドク)院内総務が現在国会に繋留しているハンナラ党の朴明煥(パク・ミョンファン)、民主党の朴柱宣(パク・ジュソン)議員に対する逮捕同意案の不処理方針をちらつかせ、その可能性がさらに大きくなっている。もし、そうなれば政界はもう一度正当な法執行を妨害したという非難を浴びることになるはずであり、国会は「防弾国会」という汚名をぬぐうことができないだろう。
7月の臨時国会が終われば、まもなく8月に臨時国会が予定されており、その次は通常国会が待っている。このため、鄭代表がその気にさえなれば、年末までにも「会期中の不逮捕特権」のかさの下で、検察の捜査を回避することもできる。しかし、それは最悪だ。政権党の代表がそんなことをしていては、今後の政権党はもちろん、政府の権威が地に落ちてしまう。現政権の改革も戯画化されるに違いない。
鄭代表の逮捕同意案は根深い政界の腐敗と法に対する軽視風潮がもたらした不幸なことではあるが、政界と検察が各自の道を歩むきっかけにもなり得る。今からでも政界が原則と正道を守るべきである。