「自由と連邦は、今から永遠に一つであり、引き離すことはできない!」シャムの双生児という言葉を初めて誕生させたタイ生まれのチャンとエン・バンカー兄弟にはこのような政治的スローガンが付いてまわった。シャムの双生児のシャムというのはタイの旧名であるシャムから出た言葉だ。1811年胸がくっついたまま生まれた双子の兄弟をアーベル・コピンという米軍将校がシャム国王の許可を得て、米国に連れてきて「シャムの双生児」と紹介してから広く知られるようになった。チャンとエン兄弟がサーカス公演をして人気を集めたときは米国の南北戦争以前、南部連合が米合衆国から分離をするかどうかで騷がしかった時期だった。北部出身の上院議員ダニエル・ウェブスターは彼らシャムの双生児を自由と連邦の象徴に喩えながら、北部と南部は決して分離することができないと演説して米国人に感銘を与えた。
◆まるで一人のように、チャンとエンと呼ばれたこの兄弟は32歳の時、2人の姉妹とそれぞれ結婚して21人の子供を生んだ。シャムの双生児が異常な人間ではなく、職業を持ち結婚もして正常な生活ができることを立証したわけだ。しかし永遠に一緒に暮らすことを願っていたわけではないようだ。行くところごとに自らまたは他人の要請で医学的関心の対象になった。ただリスク負担が非常に大きくて分離手術ができなかっただけだ。
◆シャムの双生児が生まれる原因は明らかではない。精子と卵子が会ってから2週間ほどした受精卵が双子になるために2つに分離する過程で、どういうわけか、分離が止まることで身体がくっついて生まれることが知られている。発生頻度は5万〜10万人のうち1人だが、実際の生存頻度は20万人に1人程度だ。数日前には29年間、 独立して暮らすことを 切に望んでいたイラン人双子姉妹が分離手術後死亡してイラン全土を涙に濡らした。63歳までくっついて暮しながらマーク・トウェインの小説、詩、ドキュメンタリーに数多く登場したチャンとエン兄弟はそれでも幸せなシャム双生児であるわけだ。
◆これよりもっと幸せなシャム双生児がいる。一昨日分離手術に成功したミン・サランちゃんとチヘちゃん姉妹だ。今年3月4日1秒差で生まれたサランとチヘちゃんはお尻のところがくっついた、言葉通り愛と知恵の一身同体だった。赤ちゃんの母親はインターネットに開設されたカフェーを通じて「不幸かと聞く人々もいるが、私たちはとても幸せだ」と話した。手足が短いとか長いとかいう問題ではなく、正しい心構えと正しい未来判断、自己管理が人生を豊かにするということが分かるからだという説明だ。すでにシンガポールで無事に手術を終えたことでサランとチヘちゃんはお互いに向き合うことができるようになった。新しく生まれたサランとチヘちゃんが国民の愛と知恵の象徴になってほしい。
金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com