太平洋戦争の被害者たちが、自分たちの問題に無関心な政府に抗議する意味で、集団で国籍放棄書を提出することにした。
日本の植民地のときに強制徴用されて太平洋戦争時に連れ去られた金成寿(キム・ソンス、79、釜山)さんは、ミャンマー戦闘で右の腕を失い、左側の足に重傷を負った。戦争が終わった後、帰国して釜山(プサン)で米軍部隊の通訳をしたり、はき物の商売もしたりしたが、負傷した体のため苦労ばかりするのが常だった。強制徴用の被害者だったが、日本は徹底して補償にそっぽを向いたし、韓国政府も無関心で一貫した。
8月15日の光復節を控えて、金さんのような強制徴用者と日本軍慰安婦のお婆さんなど太平洋戦争の被害者たちが、集団で国籍をあきらめることにしていて、波紋が広がっている。被害者たちは「どんなにせっぱつまれば、国民が国家を否定しようとするのか」と政府に対する怒りと、絶望を露にした。
およそ30の市民社会団体が連帯する「日本植民地時に強制動員、被害真相解明などに関する特別法制定の推進委員会」(推進委)は、「太平洋戦争の韓国人犠牲者遺族会」「ナヌムの家」など5つの被害者団体会員300人余りが、8月13日に国籍放棄書を提出することにしたことを31日明らかにした。
推進委は、国籍放棄書とともに被害者たちの事情を盛り込んだ理由書を大統領府に渡し、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領との面談も要請する計画だ。
彼らが国籍放棄という「極端な方法」を選んだ理由は、韓国政府のぬるま湯的な態度のためだ。日本が65年の日韓基本條約を根拠に、日本植民地期間の請求権がすべて消滅したと主張しているのに対して、韓国政府が何ら異議を提起していないことに胸が痛むという。
推進委の崔鳳太(チェ・ボンテ、弁護士)共同執行委員長は「日本政府の立場が間違っっているということを明らかにするために、日韓基本條約文書の公開を政府に求めたが、外交通商部は『日本政府の要請と外交関係などを考慮し、公開しない』という返事のみを送ってきた」とし、「結局、被害補償問題を韓国政府が塞いでいる」と話した。
日本軍慰安婦の被害者たちが集まって住むナヌムの家の安信権(アン・シングォン)事務局長は、「被害者申告をした300人の慰安婦お婆さんのうち129人だけが生存しており、平均年齢は80歳を超える。この方々がすべて亡くなる前に公式謝罪と法的補償を受けるために、特段の対策を立てなければならない」と強調した。
大統領府を訪れて、犠牲者代表で国籍放棄書を渡す予定である金さんは、「韓国政府は私には日本政府に劣らない加害者だ」と話した。
しかし、国籍放棄の手続きは容易でないものとみられる。法務部の関係者は「他国の国籍を取得して、国籍喪失の申告をしなければ国籍放棄ができない。単に無国籍者になるのは法的に不可能」であることを明らかにした。これに対して、崔(チェ)共同執行委員長は、「国籍放棄書が差し戻される場合、行政訴訟も辞さない」と話した。
金善宇 sublime@donga.com