ナイジェリアの大統領専用機に乗って出国。モザンビークとガーナ大統領が同行。ナイジェリアアブジャ空港に到着するや、オバサンジョ・ナイジェリア大統領が出て熱烈な歓迎。一昨日、権力の座から退いたリベリアのテーラー前大統領の亡命シーンだ。亡命は「政治的弾圧や宗教的・民族的圧迫から逃れるために、外国に逃避して保護を要請する行為」をいう。かなりの礼遇を受けはしたものの、テーラーは、パレスチナ生まれの米国学者エドワード・サイードの言葉どおり「考えることは易しいが、経験するには悲惨な」亡命者に転落した。
◆リベリアは、絡まった糸も同じだ。長年の内戦、周辺国との複雑なかっ藤など、考えなければならない要因が一つや二つではないため、自信をもって誰が善で誰が悪だと判断できない。権力を継承したモーゼス・ブルラ氏の経歴だけを見ても状況は複雑だ。彼は、テーラーとともに反乱を起こした反乱軍出身だ。リベリアにすぐに平和が訪れると期待するのは、あまりにも純粋な発想である。米国に対して「死にゆくリベリアを救援してほしい」と訴えた新任大統領ブルラ氏の言葉の奥に、テーラーの退陣にもかかわらず糸を容易に解きほぐすことのできないリベリアの苦悩が込められている。
◆リベリアの事態で、国際社会が大量殺りくを放置してはならないという教訓を得ることができる。テーラー氏が89年に反乱を起こして7年間の内戦を繰り広げる間、約20万人が命を失った。今もテーラー政権に反発して武装闘争をする反乱軍が国土の5分の4を掌握している。2ヵ月前、反乱軍が首都を包囲した後に戦闘が激化し、最近だけで約2000万の民間人が虐殺された。周辺国の指導者が血なまぐさい内戦の一方の当事者であるテーラー氏に亡命地を提供して礼遇するしかない切迫した事情があった。いずれにせよ虐殺を止めなければならないのだ。
◆そのような点で、米国は非難を免れがたい。米国とリベリアの縁は深い。米国から帰還した奴隷たちが建国したアフリカ最初の共和国がリベリアだ。テーラー氏は、米国で経済学を勉強した経歴まである。にもかかわらず米国は、アフリカ国家の訴えにもかかわらず、これまで介入をちゅうちょしてきた。大量破壊兵器の開発に耐えられずイラクを攻撃した国が米国だ。大量破壊兵器の拡散阻止が大量虐殺の中断より重要だとは言えないだろう。アフリカ国家が派遣したわずか700人の平和維持軍では、リベリア国民を保護することは難しい。米国が直ちにリベリア周辺海域に駐留する3000人の米軍に上陸命令を下すことを願う。
方炯南(バン・ヒョンナム)論説委員 hnbhang@donga.com