ブッシュ米政府を辛らつに批判してきたマサチューセッツ工科大(MIT)のノアム・チョムスキー教授(写真)が、今回は、米国のイラク戦争について、正当性が少ない「破廉恥な侵略」と定義付けた。
反戦活動家のチョムスキー教授は、仏ルモンド・ディプロカティーク紙の8月号に寄稿したコラムで、米国が01年9月11日の米同時多発テロ事件以降、国家の安保戦略に採択した「予防的戦争」という概念について、戦争犯罪との見方を強調した。米国は「予防的戦争」政策を新しい国際規範にするための手本としてイラク戦をぼっ発させたということ。同氏は、戦略的位置や石油資源など戦争を甘受するだけの投資価値も高かったと指摘している。
チョムスキー教授は、米国と英国がイラクで大量破壊兵器(WMD)の証拠を見いだすことに失敗し「イラクは明確にWMDを持っている」としていた以前の立場から「潜在的な兵器生産施設を持っている」との方向へと退いたと話した。
教授はまた、米国が、イラクと9.11同時多発事件の主犯とされるウサマ・ビンラディン氏との関連性について、実体のない証拠だけを提示した結果、むしろテロ組織「アルカイダ」への追従勢力を増やし、対テロ戦だけ難しくさせていると主張した。
チョムスキー教授の見解によると、米国は、戦争を起こす際、類例を見ない宣伝戦を繰り広げて、誤った方向へと世論を誘導したが、根本的な流れを変えることはできなかったという。また、多くの米国人らは、国際危機に対処するにあたって、米国よりは国連の指導力を好んでおり、イラク再建の過程にも国連が積極的に取り組むべきと信じているという見方を示している。
教授氏は、歴史学者のアーサー・シュレジンジャーの話として、9.11テロ事件によって生じた米国への同情心が、戦争によって憎悪心に変わり、ブッシュ大統領はイラクのフセイン前大統領よりもさらに大きな脅威として認識されつつあると、批判した。
havefun@donga.com