これからは「できる人は忠南(チュンナム)に送れ」という言葉ができるかも知れない。今年第2四半期に首都圏から地方に住民登録を移した11万4000人のうち、1万8000人が忠南を選択したという。忠南が首都圏の居住者に人気がある理由は、政府が推進している行政首都の予定地がこの地域だからだ。不動産の理財に明るいソウルの人たちが忠南に足繁く訪ねるのもこれと関係なくはないだろう。
◆韓国の人口移動の特徴は「首都圏への集中現象」。1949年にはソウルに全人口の約7.2%が集まって住んでいた。この割合は1960年に9.8%、70年に17.6%、80年に22.3%と次第に高くなり、90年には24.4%とピークに達した。その後、首都圏の新都市開発の影響でソウルの人口割合は下落しつつある。だが、ソウルと仁川(インチョン)、京畿(キョンギ)を合わせた首都圏の人口割合は毎年例外なしに増加しつつあった。四半期基準でも、首都圏の転出人口が転入人口を上回ったのは98年第2四半期と第3四半期だけだった。その時は、韓国経済が通貨危機で苦境に立たされていた。金利高、ドル高に耐えられなかった企業が大量解雇を余儀なくされ、解雇された者を中心に帰農ブームが起き、例外的に人口が首都圏から離れる現象が現れたのだ。
◆首都圏の面積が全国土で占める割合は11%に過ぎないが、人口割合は半分に迫っている。富の集中度はさらに大きい。人口と産業が特定地域に集中しすぎると、首都圏では住宅価の上昇、交通混雑、環境汚染、犯罪件数の増加など副作用が出る。国家全体としては、地域の均衡発展に問題が生じる。このため、政府は首都圏への集中を防ぐ政策を持続的に推進してきた。首都圏内で人口集中を招く施設や大規模な土地開発を規制する首都圏整備計画法がその代表的な例である。首都圏の工場総量制もしかりである。
◆これまで政府が掲げてきた首都圏集中抑制政策は大抵失敗したと評価されている。首都圏の人口集中度が下落していないということがこれを裏付けている。なのに、現政権は規制一辺倒の首都圏集中抑制政策に拘っている。地域の均衡発展を名分に、首都圏に工場を建てられないようにしたからといって、果たしてその企業が地方に工場を建てるだろうか。むしろ、投資を渋ったり、海外に工場を建てる可能性が高い。首都圏の人口集中抑制は規制だけでは成し遂げられない。一人当たり国民所得が高くなって、地方分権が行われれば、問題は自然に解決する。水は高いところから低いところに流れるように、人口移動もやはり、無理に抑えてできるものではない。
千光巖(チョン・クァンアム)論説委員