屋上の部屋の猫、前の家の女、浮気をした家族、雑犬(トンゲ)、ボディーガードそして茶母(タモ)、これら人気大衆文化商品に一貫する情緒があるとしたら、断然「クール(cool)」だ。男女が会って別れる際も泣いたりすがったりするようなべたつく感情はない。ドラマ「ボディーガード」の主題歌はいっそのこと「クールに」だ。映画『雑犬』では「私はあなたがクールな人と思った」という台詞が出る。ドラマ「茶母」ファンの胸を痛めるプロポーズも「胸が苦しいか。私も苦しい」が精一杯だ。べたべたする情と情熱的な感情を重視する年を取った世代にはとうてい理解できない軽薄な表現だが、若い世代は熱狂する。「クールだ」という言葉を最大の賛辞と考えるクールな世代の感性をクールに刺激するためだ。
◆米国人たちが常日頃使う「クール」は良い、格好よい、流行の先端にあるなどを意味する。タイムズ紙の最新号はファッション商品テレビなどで流行の流れをいち早く読み取り、人より先に楽しむクールピープルを「アルファ(alpha)消費者」と紹介した。彼らの動きを分析した情報を企業に売るトレンド・ウォッチャー(trend watcher)が新しい専門職業に登場したという。韓国の若い世代に「クール」は最新の流行のみを指す言葉ではない。ウェブスター辞書に出る解釈、すなわち「どんな場合にも冷情さと自分の調節能力を失わない」「あまりに熱烈で親しみのある姿を見せない」「感情の浮き沈みをコントロールする」が、彼らの情緒をよく説明してくれる。
◆「文学ドンネ」「文学手帳」など文芸誌秋号に登場した新人の作品にもこうした傾向が出ている。ひととき流行だった、内密した世界をしっとりと描いてきた女性的作品はいつのまにか消えていった。代わりに感情を排除したまま、日常をさらっと描くクールな作品が大勢をなす。若い世代のクールな日常生活が文化に反映しているのだ。恋人と別れた彼らは携帯電話にインプットされた電話番号を消してしまえば、それ以降思い出すこともない。会社では電子決済やメッセンジャーを通じていやな人に会わないでも仕事をすることができる。
◆このように「クールな時代の流れ」が広がった要因は、急ピッチに進歩するテクノロジーの変化と所有の代わりに接続を重視する感覚的かつ便宜的な生活様式から見つけることができるだろう。真剣ぶらずにさっぱり、垢抜けたなどが美徳になったおかげで、人間関係も「少しだけ与えて、少しだけもらおう」さらには「与えず、もらわず」に変わる傾向だ。クールに暮らすと傷つけることもない。どうせ死ねば地中にクールに埋められるはず。果たして生きているうちに氷のようなハートでクールに生きる必要があるのかとも思うが。
金順徳(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com