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[オピニオン]宗婦

Posted September. 08, 2003 23:38,   

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立派な3人の息子を持つ家庭がある。兄弟の仲も良くいずれも親孝行の息子たちとあって、周りからも称賛が絶えない。ところが、祭日になると決まって一騒動が起こる。キャリアウーマンである次男と3男の嫁が祭日の当日、礼儀上のあいさつだけを簡単に済ませてはさっさと実家に帰ってしまうため、料理や後片付は、専ら専業主婦である長男の嫁に任されがちになるからだ。彼女のストレスは、そのまま夫の長男に飛び火してしまう。主婦たちは祭日になるとストレスを受けるというが、男性の方にも言うに言えないストレスが少なくない。両親のお小遣いや、妻の実家にも誠意を示さなければならないし、職場の上司や恩師へのご挨拶に、かみさんのご機嫌取りに至るまで…。

◆長男の嫁より何十倍も辛い「道理」がある。宗家(本家)の長男の嫁、つまり宗婦である。宗孫(長孫)の役目も大変だが、宗婦のそれははるかに厳しいものがある。1年に何十回もの祭祀を行うことはもちろんのこと、四六時中やってくる客を丁寧にもてなさなければならない。500年もの間、囲炉裏の火を絶やさず守り通してきた、ヨンウォル地方を本貫とするシン氏宗家、350年間茶脈を継承してきた、へナム地方を本貫とするユン氏宗家の今日があるまで、宗婦たちの献身と労苦は、たった数日の祭日を過ごすだけでも嫌気がさしてしまう今日この頃の主婦たちには、想像すらできないだろう。

◆名門の宗家の礼儀と味、趣がそれぞれ異なるのは、宗婦の心遣いと手並み、洒落の感覚がそれぞれ違っていたからだろう。安東(アンドン)地方を本貫とするコン氏家の五色菓子、へナム・ユン氏家の柿だんごや絹菓子、パピョン・ユン氏家のしょうゆ味の効いた宮廷トッポキ(お餅に肉や野菜を加えて炒めた料理)、チョンウプ、カンジン・キム氏家のケジャン(蟹をしょうゆに漬けた料理)などは、いずれも宗婦の腕前が代々伝えられてきた家庭の味である。韓国の古建築を代表する江陵(カンヌン)のソンギョジャン、忠清南道(チュンチョンナムド)ウェアム村のイェアン・イ氏宗家、安東の金誠一(キム・ソンイル、朝鮮時代の文臣、学者)と柳成龍(リュウ・ソンリョン、朝鮮時代の文臣、学者)宗宅、禮山(イェサン)の金正喜(キム・ジョンヒ、朝鮮後期の書画家、文臣)古宅などが、今なお気丈にその命脈を維持しているのも、宗婦たちの手厚い面倒見のお陰である。

◆男尊女卑の時代にも、宗婦の役割と地位だけは例外だった。宗婦は、家の経済権の象徴であった「ゴッカン(蔵)の鍵」を握っていたほか、一族の長老までもが、宗婦には「言葉づかい」に気を使っていた。祭祀の際に宗孫が初獻(最初の盃)を捧げると、宗婦が亞獻(2度目の盃)を捧げるほどだった。この頃、全国の宗家の最大の悩みが「宗婦を迎え入れること」だという。50代以下の宗婦は、滅多に見られないくらいだ。そのため、複数の宗家では、祭祀を「先祖の日」として、一回で済ましているという。しばらくすれば「人間国宝」にでも指定しなければ、宗婦の命脈が維持できなくなるかもしれない。

呉明哲(オ・ミョンチョル)論説委員 oscar@donga.com