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[書評]光学機器が名画を作る

Posted October. 03, 2003 23:35,   

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「名画の秘密」

デービットホーク二著/ナム・ギョンテ訳/296ページ/6万ウォン/ハンギルアート

わたしたちはよく霊感の産物ということに焦点をあわせて芸術作品を見る。しかし、芸術創作で霊感に劣らず重要なのが技術的な表現力だ。霊感が魂で、技術的な表現力が肉体だとするならば、芸術鑑賞で霊感と技術的な表現力をバランスよく理解して吟味するのはかなり重要なことだ。問題は一般の鑑賞者のみならず、美術史家や評論家などの専門家もこの技術的な表現力の役割や重要性を見過ごしがちだということだ。

イギリスの著名な画家が書いたこの本は、美術史の中で見逃してきた重要な技術的な伝統の一つを粘り強く探って、新しい観点を提示した力作だ。本を読んでいくと、技術を使いこなす画家、それも著者のように卓越した表現力を持つ美術史的な巨匠のみに書ける本だということを認めざるを得ない。

著者が分析した西洋絵画の重要な技術的伝統は、光学と関連したものだ。光学は遠近法、解剖学とともに西洋絵画の重要な技術的進歩を促した学問だ。しかし、後者に比べ、その実態的な役割についての理解が今でもなお不足しているほうだ。著者はその理由として二つを上げている。ひとつは昔の職人たちの中核技術がそうであるように、光学に基づいた表現、あるいは画家ごとに一種の秘密のような技術ができ、外部へ露出しないように制限されたということであり、もうひとつは非事実的な画家がありふれている現代では、光学と関連したツールの使い方と知識の引継ぎが途絶えてしまったということだ。

この本によると、欧州の絵画史で光学表現が本格的に活用され始めたのは、1430年代のフランドールからだ。このときから光学に基づいた絵画表現は鏡—レンズ、カメラ・オブスクラ、カメラ・ルシダなどのツールの発達に支えられて密度の高いものとして展開される。これらのツールと技術が写真機の発明と直接につながり、その基本的な原理は光を集めてわたしたちの目やカンバスにイメージを投影するものだという事実だけは記憶しておく必要がある。

この本はこのような光学技術が応用され始めてから、西洋では複雑な遠近法や解剖的な知識より、光学に頼って絵を描く現象がずっと目立って現れるようになったとみている。人であれ、静物であれ、対象の実際のイメージをカンバスに投影しておいて(幻灯機で写真のイメージを白い布の上に作ったものを連想すればいい)、そのまま描いたら簡単に速いスピードで、そしてかなり事実にそって絵を描けるということ。そのため、あえてモデルを直接目で見て、測量しながら(これを著者は『目回し』だと呼ぶ)苦労して描く必要がなかったということだ。わたしたちが愛するほとんどの名画が、このようなやり方で描かれたと著者は主張する。もちろんこのような技術も高度の表現のためには、並々ならぬ才能と訓練が欠かせないということも強調した。

この本で何よりもおもしろい部分は、自分の主張を裏付けるために、誰のどんな絵にどのようなやり方で光学技術が使われたかをホク二がいちいち掘り下げて分析してみせる場面だ。彼の驚くべき鋭い目利きは、見る人の目を見張らせるものがある。数百年の歴史が残したパズルを完璧に解いたようなものというか、絵を見る醍醐味が味わえる本だ。



朱性元 swon@donga.com