盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の再信任発言で、政局が渦に包まれている。今回の事態の原因と責任の所在をめぐって意見は様々だ。盧大統領の適切ではない言行のためだという主張から、巨大野党の横暴のためという主張まで出ている。このため、国論が幾多にも分裂する見通しだ。来年の総選を狙った大統領の賭けという分析もあるが、ややもすると大統領本人が下野する可能性も排除することができない。このような状況になったことに対して同情論も聞こえるが、再信任を得ても国論が統合されるという保障はない。
◆盧大統領の再信任宣言に続き、大統領秘書陣と内閣全員が辞意を表明し、大統領はこれを受理しなかった。このような波紋が、国政空白をもたらして、国民不安を加重させたという批判を避けることはできない。盧大統領は、首相を中心に内閣が国政の中心に立って、責任をもって導くことを注文した。国政の混乱期にこれが可能かどうか疑問である。責任首相の下でも、内政は首相が統括するが、国益を優先する外交・安保問題は、大統領が中心になって指導力を発揮しなければならない。大統領自らが再信任問題を提起した前代未聞の事態で、外交の中心が揺れ動いている。
◆今回の事態は、韓国の安保の現実に少なからぬ負担になり得る。イラク派兵問題で指導力を発揮し、国論を導いて進むことができるのか心配だ。適切な派兵規模、派兵地域、費用分担に至るまで敏感な事案が山済みで、ただでさえ国論が2分している。合意点を見出すことが困難で、イラク視察団の再派遣が検討されている。北朝鮮核問題を扱う6者協議第2回会合もスムーズではなく、国内では北朝鮮の核再処理問題に神経を尖らせている。米軍の再配置問題による龍山(ヨンサン)基地移転交渉も遅れている。宋斗律(ソン・ドゥユル)氏問題で理念論争まで起き、論議が加熱している。
◆大統領の再信任宣言を既成事実として受け入れ、再信任を問う方式として国民投票が挙げられている。この問題は、政界で、適切な法律整備を通じて違憲の素地を無くす措置が先行されなければならない。また国民投票の施行時期について、来年の総選を前後した時期になるという話が出ているが、新4党体制では合意を導き出すことは容易ではない。この期間は、周辺情勢に照らして、安保の不確実性が最も高まる時点だ。国家的に内憂外患が重なれば、安保不安は加重される恐れがある。葛藤を統合に導く知恵が切実だ。
安仁海(アン・インヘ)客員論説委員(高麗大学教授)yhahn@korea.ac.kr