33年間裁判官生活をした朴ウドン弁護士(69)が判事時代の話を盛り込んだ「判事室から法廷まで」という随想集に続き、最近、「弁護人室の内と外」というエッセイを出版した。「裁判官は判決でだけ語る」と言う法諺のためか、裁判官の苦悩、悔恨、そして司法の内面を記録した本はなかなか見られないという点で、朴弁護士の本は大事な価値がある。「弁護人室の内と外」には、最高裁判事を最後に裁判所を辞め、弁護士生活をしながら経験した「非理の誘惑」話が入っていて興味深い。
◆朴弁護士はこの本で、「しばしば判事との交際費を別途支給すると言って、それとなく探ってくる依頼人もいた。弁護士への報酬はできるだけ安くあげようとするくせ、交際費なら惜しまずに出すという依頼人に会うこともある」と書いている。財力家とは思えない田舎の人が朴弁護士に上告事件を任せ、最高裁の担当判事との交際費として300万ウォンを出すと言ったという。この事件は最高裁で上告棄却となったが、失意に落ちた年寄りの姿がしばらく目の前にちらついて、「経費は心配しないでいい」という提議を聞き入れてあげなかったことがいつまでも心に残ったという。下級審刑事事件であればあるほど、このような交際費提供提議が多いそうだ。
◆最高裁判事を勤めた他の元老弁護士が、「経歴弁護士を法官に任用する法曹一元化に反対する」と主張するのを傾聴したことがある。法曹一元化は在野法曹の宿願で、もうすぐ発足する司法改革委員会の核心議題でもある。しかしこの元老弁護士は、最高裁を退き弁護士世界をのぞき見てからは、裁判官時代に賛成していた法曹一元化に懐疑的な思いが強くなる一方だと言う。弁護士業界に事件誘致ブローカー雇用など非理が有り溢れている反面、税金をまともに払う弁護士は一体どれぐらいいるのかということだ。彼はこのような弁護士たちが判事になったら、他人を治罪できるはずがないのではないかと嘆く。
◆朴弁護士のように依頼人の交際費提供提議を断る弁護士もいるが、自分から進んで要求する弁護士もいるようだ。検察が摘発した不正弁護士の中には、「捜査チームにあいさつするのに必要だ」といって、交際費として1億ウォンをもらった弁護士もいた。法曹三輪の一員である検察が法曹不正捜査をするのは、人間的に難しい点が多いと思うが、弁護士全体の名誉のためにも不正弁護士をあぶりだすことは必要だ。もっとも常習犯罪人まで顧客として相手しなければならない弁護士に、法官に求められるのと同じ高度の倫理を期待するのは最初から無理かも知れない。しかし、「不正弁護士」を法曹人だと呼ぶわけにはいかないのではないか。
黃鎬澤(ファン・ホテク)論説委員 hthwang@donga.com