イラク戦争、帝国の統治、そして子どもへの愛。ブッシュ米大統領とメディア財閥ルパート・マードック氏のキーワードだ。大義名分がないという批判を顧みず、イラク戦争を導いたのはブッシュ大統領だった。米国の強硬保守メディアであるフォックス・ニュースのオーナー、マードック氏は、戦争を主張してきたネオコン(新保守主義者)の心強い後援者だ。ブッシュ大統領が軍事力と経済力そしてソフトパワーいっぱいの傲慢さで「米帝国」を指揮するなら、マードック氏は新聞、テレビ、衛星放送、映画、出版など、全世界にわたる「メディア帝国」を統治する。
◆数日前、ブッシュ大統領は双子の娘の大学卒業式に出席しなければならないと、来年5月に予定された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の延期を要請した。ドイツ時事週刊誌シュピーゲルが、「時にはささいなことが国際政治を決める」と皮肉ったほどだ。72才で今年初めに6人目の子供が産まれ、子どもへの愛を誇示したマードック氏も、3日前に「父情」を世界に知らしめた。次男のジェイムズ氏を自分の多国籍メディアグループであるニュース・コーポレーションの子会社、BスカイBの最高経営者(CEO)に選任したのだ。
◆マードック氏ほど極端な評価を受ける人も珍しい。51年前に父親から受け継いだオーストラリアの出版事業を「帝国」に育てあげたグローバルメディア皇帝、言論民主主義の化身と絶賛される一方で、メディア帝国主義のドン、世界の人々の情緒を汚染させた低質映像商人という批判も付きまとう。「私は利潤のためにメディアを経営する。尊敬されようと思ってするのではない」という彼の言論観は、今日のメディアの現実を表している。向こう見ずな野望と大胆さ、マキャベリ追従者としての権謀術数は、メディア帝国を起こした土台だった。熾烈なメディア征服戦で彼が悟ったことは、結局「信じられるのは家族しかない」ということなのだろうか。「私は永遠に引退しない」と言っていたマードック氏も、新聞部門は長男レイクラン氏に、放送は次男ジェイムズ氏に任せたのだから。
◆韓国なら、若い財閥2世の経営権相続も「普通のこと」だが、英国は沸き立っている。マードック氏のBスカイBの持分が「せいぜい」35%で、残りは他の株主が所有者なのに、どうして勝手に経営世襲を決めるのかということだ。そんなことでどうやって株主の利益を保護し、批判的メディアの役割ができるのかという指摘もある。実はジェイムズ氏は、香港スターテレビを黒字にするなど、経営能力があると評価されている。中国に衛星テレビを進出させるために、法輪功を批判して中国政府の機嫌を取るなど、父親の事業手腕も受け継いだ。彼の未来は、どのメディアコンテンツよりも興味を引きそうだ。
金順徳(キム・スンドク)論説委員yuri@donga.com