米国の対イラク戦略が、来年中に早期主権移譲および相当数の米軍撤収を検討する方向に急旋回している。比較的安全とされていたイラク南部ナシリヤで発生した爆弾テロで、イタリア軍警を含む31人が死亡するほど事態が悪化したことで、米政府が「手を引く作戦」を急いだものと読まれている。
米国の政策変更は、韓国軍の派兵と直結するという点で重要な状況変化だ。政府の派兵推進が米国の要請によるだけに、米国が変われば韓国の戦略も調整するのが当然だ。大統領府は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が11日に「3000人以内で復興支援中心の部隊を検討せよ」と指示したと明らかにしたが、その指針は米国の政策変化を考慮したものではないため、縛られる必要なない。
事実上、イラクを統治している米国が撤収を検討する状況で、以前の判断を基に派兵問題を扱うのは愚かなことだ。イタリア軍警に対するテロ以降、世界各国の世論が急激に悪化しているなか、日本も自衛隊派兵を来年に延期している。政府が新しい状況を考慮しなければ、派兵に反対する国民を説得することは困難だろう。
このような点で、来週ソウルで開かれる韓米定例安保協議会は重要だ。米国はイラク政策を詳細に説明し、派兵に関する要求事項を具体的に明らかにしなければならない。悪化した現地状況を無視して、米国の必要によって派兵を要求する形になってはならない。米軍撤収を念頭に、代わりとして韓国軍を危険地域に行かせるのでないなら、納得できる根拠と資料を提示しなければならない。
政府は、韓米同盟関係を考慮して苦心した末に難しい決断を下した。しかしここで安堵するのではなく、最後まで緊張を緩めてはいけない。軍の派兵能力や国民の憂慮、全般的な状況変化を考慮し、米国の要求が過度だと判断されれば、断固拒否しなければならない。派兵部隊の安危が政府の選択にかかっているという点を肝に銘じてほしい。
本紙は、これまで派兵に関する見解を明らかにしてきた。米国の派兵要請、国連安全保障理事会の決議案採択、盧大統領の派兵決定などを経て、大統領が国益と主権を考え慎重に決定しなければならないという一貫した主張をしてきた。派兵は、一瞬の判断や少数の意見で左右される事案ではないと考えるからだ。今こそ国政の最高責任者が、国内状況はもとより、変化した国際状況まで十分に考慮して、賢明に対応しなければならない。