政治家がよく口にする故事成語の目録に「事、必ず正しきに帰す」がある。カネと関連してあれこれ誤解されていたが、その疑いが解消されたと判断した時や、激しく争った訴訟で相手が有罪判決を受けた時などに使われる「言葉」だ。陳承鉉(チン・スンヒョン)氏から5000万ウォンを受け取った疑いで起訴され、7月の控訴審で無罪判決を言い渡された權魯甲(クォン・ノカプ)元民主党顧問は裁判直後、「一言で言えば『事、必ず正しきに帰す』だ」と答えた。9月の安全企画部予算の選挙資金流用事件(いわゆる「安風」事件)裁判の1審で姜三載(カン・サムジェ)議員に有罪が言い渡されると、ハンナラ党は「政治裁判」として反発したが、民主党と統合新党(後にヨルリン・ウリ党)は「事、必ず正しきに帰す」と評価した。
◆ヨルリン・ウリ党の鄭大哲(チョン・デチョル)議員も、一昨日そんな言葉を使った。自分が大統領選挙資金を個人的に流用した疑いが提起され検察が捜査中だという一部のマスコミ報道と関連して、康錦實(カン・グムシル)法務長官が「検察では捜査したことがない」と答弁した直後のことだ。鄭議員は、「政権発足以降、選挙資金だなんだかんだいって一日たりとも人を放っておかない。まるで後援金でも流用した者かのように取り扱われるのは自分に対する耐え切れないほどの冒涜だ」とし、「結局『事、必ず正しきに帰す』ではないか」と語った。誤解が解けてすっきりした気持ちだから言える言葉だったろう。
◆検察の不法大統領選挙資金の捜査が進められるにつれて、多くの政治家の名前がマスコミに取りざたにされている。時には実名で、時にはイニシャルで。昨日は名前は出されなかったが、与野党議員4、5人が選挙資金を流用したという端緒を検察がつかんだという報道があった。個人の名前が出る報道があるたびに、濡れ衣だと悔しがる政治家もいるだろう。だが、間違いがないとしたら、結局時間が解決してくれるのがこの世の習いだ。よいことをすれば必ず福となって返ってくるが、悪いことをすれば必ず罰として跳ね返ってくる。それこそ「事、必ず正しきに帰す」の哲学だ。
◆だが、本当に知恵ある人は、誤解や濡れ衣を着せられる余地をあらかじめ遮断することだ。数年前までは韓国政治では言わずと知れず、カネが行き来し、あとくされを心配しなくてもよかった。だが、今はそんな世の中ではない。いくらわずかなカネでも、それが不法に渡されたものなら、結局尻尾をつかまれる。不正疑惑が一つ一つ暴かれていくのも、今の検察捜査がそれを証明している。これも「事、必ず正しきに帰す」なのだ。もはやこの地で正しく政治をしようとするなら、いかなる場合でも不正腐敗に染まらないという心構えをしっかりすることが重要だ。つまり、まことにすばらしい政治とは、誰も「事、必ず正しきに帰す」などと言う言葉を口にしない政治ではなかろうか。
宋煐彦(ソン・ヨンオン)論説委員 youngeon@donga.com