カダフィ・リビア国家元首を21世紀に見合った指導者に分類することは困難だ。クーデターで権力を手にした過程もそうだが、これまでおよそ34年間続けられてきた長期政権も世界的な潮流とはそぐわない。西欧世界では彼を「中東の狂った犬」、「一人狼」、「誇大妄想症の患者」、「気まぐれ屋」などと呼んで後ろ指を差している。米国のブッシュ政権がリビアをイラク、北朝鮮と共に「悪の軸」と規定し、「ならず者国家(roguestate)」と目した背景には、「非正常な指導者」カダフィに対する米国の根深い不信感がある。
◆そんなカダフィが突如大量破壊兵器(WMD)開発を放棄すると宣言し、世界を驚かした。米国の見方からすれば、イラクに次ぐ2番目の悪の軸であるWMD戦線が崩壊したのだ。イラクのサダム・フセインの逮捕による「ショック」が原因であれ、経済的な利益を狙った苦肉の策であれ、リビアのWMD放棄は嬉しい知らせである。リビアが選択した道は、イラク式よりもはるかに望ましい葛藤解消法なため、さらに喜ばしい。核開発疑惑を受けているイランも数日前、国際原子力機関(IAEA)の特別査察を受け入れることにした。予想だにしなかったWMDの解決旋風である。
◆カダフィは就任以来、極端な反西欧、反ユダヤ政策を推進したことで西欧と対立してきた。彼は声を高くするにとどまらず、たとえテロという卑劣な手段を動員し、行動で西欧に対する反感を表した。88年英国上空で米国のパンナム旅客機を爆破し、搭乗者257人を全員死亡させた事件がリビアの代表的な国家テロである。ローマとウィーンの同時爆弾テロをそそのかし、3日間米国の空襲を受けて死の危機を迎えたりもした。過去のカダフィは米国との対決のためには、軍事的脅威と経済制裁まで甘んじる「無謀な指導者」だった。
◆長い間時代錯誤的な指導者として評価されてきたカダフィの急な変化を説明することは容易ではない。61歳になってやっと大人になったと嘲笑的に見る評価があるが、彼を「角のある指導者」と罵倒していた西欧の一方的な認識にも間違いがあっただろう。だが、カダフィに世界の変化を読み取る能力がなかったら、WMDを放棄する決断を下すこともできなかっただろう。彼はすでに2000年5月に米マスコミとの会見で、「今日の世界は昨日の世界ではないため、現在のリビアも過去のリビアではない」とし、「就任以来、全世界が急変したが、私はその過程に従った」と述べた。熟考した結果であり、瞬間的な思いつきによる奇行ではなさそうだ。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が彼をモデルとし、核放棄を宣言したらどんなにいいことか。
方炯南(バン・ヒョンナム)論説委員hnbhang@donga.com