「このような激しい議論は金喜愛(キム・ヒエ)さんを二度殺すことではないでしょうか」。
昨年末に終わったSBSのドラマ『完全な愛』をめぐってネチズンが繰り広げている議論が激しさを増している。いわゆる「メタ(meta)論争」だ。その中心に作家の金秀賢(キム・スヒョン)さんがいる。年末のSBS演技大賞でヒロインの金喜愛さんが最優秀賞をもらえなかったことに対して、「もらって当然の人に贈られない賞はゴミ」と話したのだ。そのドラマの執筆者からの問題提起であったため、身内擁護だという指摘もある。しかし、ほかでもない金秀賢さんの発言であることが、このメタ論争に爆発性を与えている。
金喜愛さんがぞっとするほどの「完全な演技」を披露したことを否定する人は多くないはずだ。ドラマの中で夫に「私を愛してくれて、言葉では言い表せないほど、ありがとう」、「愛しているわ。また出会って、一緒に暮らそう」という台詞を話すときの愛情と感謝と申し訳なさと悲しみの入り混じった演技は、金秀賢ならではの魔術のような言語に出会って、初めて生命力を発したといえる。きれいに見せようと寝るシーンでも濃いメイクアップを消さない他の女優とは違って、彼女は本当に患者のような顔とやせ衰えた身体で演技に臨んだ。男性ドラマの「武人時代」しか見ていないという中年の男性さえ、その演技にのめり込み、妻の健康にも気を使うようになったという話があるほどだ。
10代に仕事を始め、20代にはもうおばあさんになった気分だったという金喜愛も、作家金秀賢のドラマに出演したのは初めてという。彼女のドラマに2、3回程度出演すれば入れるという「金秀賢軍団」にはまだ加入していないのだ。書いたドラマは全部話題作になり、出演したタレントは皆スターになったのだから、タレントならそこに入りたい気持ちも分かる。「 金秀賢パワー」はテレビ局の社長に並ぶというのもその理由からだ。
金秀賢パワーの核は彼女の競争力だ。人生とは何か、人間とはどんな存在なのかを見抜いているような全知全能な作家の観点と固執が彼女にはある。韓国人の独特な心理構造と、どうすれば視聴率が上がるのかを知っている。作品の中の人物を最もうまく表現できるタレントを選び出す感覚も持っている。それが好きな視聴者とそうでない視聴者がいるだけだ。有能な人のパワーは時に目に余ることはあっても絶望を感じることはない。それが素人と玄人の違いだ。