韓国・チリ自由貿易協定(FTA)批准を国会の壇上占拠で阻止した農村出身の一部議員は、現場写真を証拠物として突き付けて「農民のために身を投げたのだから、再び私を選んでほしい」と言うだろう。しかし、彼らは、金バッジに目がくらみ、経済的な国益にそっぽを向いたという批判を免れ難い。経済成長の80%を輸出に依存していながらも、FTA締結国に海外市場を奪われているのがこの国の現実だからだ。
農村の有権者は、FTA批准を阻止した国会議員を農民の味方だと速断しないでほしい。FTAの漂流は、農業と農村支援対策の差し支えにつながる。FTAが昨年末までに批准されなかったため、今年の支援額のうち5500億ウォンがすでに予算から引き抜かれている。輸出を引き続き増やさなければ経済成長を持続し難く、非農業部門の税負担とこれを活用した農村と農業に対する投資も限界にぶつからざるをえない。また、海外市場をもっと広げてこそ、農村にも効果が及ぶ新しい働き口を増やすことができる。農村はこれ以上農業だけでは暮らしていけない。
各政党が真に経済を立て直す政治をしようとしているならば、総選挙候補の審査でFTA批准阻止行為を公認欠格事由の一つとして反映すべきである。そうでなければ、政党が私的な栄達だけを図る人々の利益集団でないとは言い難い。
これに先立って、各政党の指導部は一部所属議員による反国益的行動を放置した責任を免れない。彼らに果たして「国の為になる」政治指導者としての資格とリーダーシップがあるのか疑わしい。特に、議席の55%を掌握しているハンナラ党の崔秉烈(チェ・ビョンリョル)代表は「国の為になる事にすべてを集中する」と公言しただけに、FTA批准に身を投ずるべきであった。
国会は朴寛用(パク・グァンヨン)議長の約束通り、来月9日には、警護権を発動してでも、必ず韓・チリFTAを批准しなければならない。経済が息を吹き返し国民が生きていくためには、両国の首脳が署名した協定も発効させることができない信頼できない国、世界市場での孤立化を自ら招く国から、早く抜け出さなければならない。