かつてのテレビドラマ「愛するが故に」を記憶する世代は「打打打(タタタ)」というOSTを覚えているはずだ。裸で生まれ、身に纏う服ひとつ残した。故に人生は儲かる商売という、悟りを開いた僧の涅槃訟のような歌謡曲である。ここから「打」を一字欠いたタタ「TATA」が、今インドのムンバイで開かれている世界社会フォーラム(WSF)のスローガンとなっている。「代案は数あまたある(There are thousands of alternatives)」の略字である。世界の経済人および政治家たちから成る、世界経済フォーラム(ダボスフォーラム)に対抗する非政府機関(NGO)、労働、環境運動の代表など、反世界化グループが集うビッグイベントである。
◆ムンバイでは、マイクロソフトの代わりにリナックスが、コカコーラの代わりに砂糖水が喜ばれる。世界化に対する「代案」なわけだ。ここで、世界化に反対する「私」は、死に際に服一着残せたとしても、儲かる商売とは言えないと考えている。強国の「あなた」が富を独占しているからだ。資本主義と激しい競争、不平等、ブッシュ米大統領の戦争に至るまで、現代社会におけるほぼすべての問題の原因が、つまりは世界化から起因しているとの指摘も根強い。
◆しかしながら、国際労働機関(ILO)の首席経済学者であるアジト・ゴースは最近、著書「世界化する世界における職業と収入」のなかで、反世界化グループの主張に一撃を飛ばした。世界化によって貧富の格差が広がるのではなく、貧国と富国間の格差が減り、生活水準もかえって高まったというのだ。中国とインドは、外国の資本と自由貿易のお陰で、経済発展に勢いがついた。多国籍企業の労働環境が劣悪であるとは言え、賃金も地元の企業より高く、働き口がないよりは遥かにましだ。世界化が盛んになれば、腐敗と独裁がなくなるという研究結果もある。
◆コンピューターを壊せば、自分だけが損を被るのと同じように、世界化の波に逆らうことはできない。その解決策は、正しい世界化から見出した方が賢明だろう。日々世界と競争する企業と違って、政府は国内で「守られている」現実の中で、企業より水準の劣る政府が、経済の足を引っ張っているとすれば、社会の矛盾は深刻にならざるをえない。昨年、WSFとダボスフォーラムに参加したブラジルのルラ大統領は、ダボスの認める手法を使って、WSFが追い求める誰もが豊かに暮らす社会をつくると述べて、拍手を受けた。もはや、反対のための反対ではなく、正しい代案を捜し求めるべき時である。
金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com