総選挙を40日後に控えて、野党が大統領弾劾発議を取り上げることを肯定的にのみ評価することはできない。国全体を考えなければならないからだ。趙舜衡(チョ・スンヒョン)民主党代表は「シナリオだが、弾劾案が議決すれば、大統領の職務が中止となり、総理が権限代行を勤めることになるが、国の力量からして十分できる」と言う。これははたして正しい判断なのだろうか。
弾劾案の発議が国会で可決されれば、憲法裁判所は6ヵ月以内にこれを審理してその是非を決めなければならない。その間、国政の空白と混乱は避けられない。大統領は存在するが、職務はできない状態が続く。それに、弾劾が発議されれば、票決に入る前に大統領が自ら退くのが普通だ。米国「ウォーターゲート事件」のときのリチャード・ニクソン大統領がそうだった。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の選挙法(公務員の選挙中立義務)違反が、はたして弾劾発議、言い換えれば、自主辞任に踏み切るほど重要で緊急を要することか。弾劾を可決しても盧大統領が辞任せず最後まで憲法裁判所の判決を求めるか、国民に直接再信任を問うことになれば、どうするつもりか。責任ある野党なら、このような質問に自信を持って答えなければならない。もし総選挙を意識して切り札を使ったとすれば国民の非難は避けがたい。
盧大統領も口実を与えてはならない。選管が違法判定を下したのだから、これを尊重して国民に謝罪しなければならない。蛇足をつけて野党を刺激するような発言を続けるせいで、野党も超強硬姿勢で出るのではないか。国政を実際に引っ張っていく大統領は、野党とは違うし、また違っていて当然だ。野党と神経戦を繰り広げているように映っては困る。
大統領は直ちに謝罪を、野党は弾劾を取りやめなければならない。それが相生の政治だ。その是非は、総選挙で有権者の審判に任せることだ。