力が強くてお金持ちの男は多くの女性を従える。「英雄は好色」という言葉はそんな能力のある男たちに対する非難ではなく擁護だ。悔しがる理由はない。美貌の女性も多くの男を従えることができる。女性たちはまた二つの部類に分けられる。男に芸術的かつ創造的な霊感を吹き入れる「ミューズ(Muse・女神)」と、破滅に導く「ファム・ファタール(Femme Fatale=妖婦)」だ。女優のモニカ・ベルッチの神秘的な顔にはミューズとファム・ファタールが同時に内在している。
◆西ヨーロッパではニーチェ、リルケ、フロイドのような知性人を眠れなくさせたルー・サロメ、ビートルズのメンバーであったジョージ・ハリソンと「ギターの神」エリック・クラップトンの求愛を受けたモデルのパティ・ボイドをミューズに挙げることができる。サロメには「彼女と付き合った男は9ヶ月以内に不朽の名作を書く」という話が付きまとっており、ボイドは二人の天才ミュージシャンから「Let It Be」「Something」「Layla」「Wonderful Tonight」など不朽の名曲をもらった。最近ニューヨークで88歳で永眠したキム・ヒャンイン女史は不滅の天才である詩人李箱(イ・サン)と画家金煥基(キム・ファンギ)の伴侶であると同時にミューズだった。
◆ファム・ファタールは愛に陷った男を死に追い込むほど致命的な魅力を持った官能の化身だ。長く垂らした髪に白い肌、赤く濡れた唇、眠そうな目に象徴される。聖書のサロメ、ユディト、デリラ、クレオパトラとカルメン、傾国の美人である楊貴妃、妲己、褒じ、西施などがこれにあたる。現代ではマリリン・モンローとマドンナを挙げることができる。男性は彼女らに陷落する以外には抵抗する方法がない。
◆ミューズとファム・ファタールは映画によく登場する。「ドクトル・ジバゴ」のジュリー・クリスティ、「グルーミーサンデー」のエリカ・マロジャーン、「恋におちたシェイクスピア」のグィネス・パルトローがミューズ系で、「氷の微笑」のシャロン・ストーン、「デミジー」のジュリエット・ビノッシュ、「ムーラン・ルージュ」のニコール・キッドマンはファム・ファタール系だ。ミューズとファム・ファタールは正反対だが、男を焦らすという共通点がある。ある女性名士にどちらかを選ぶかとすればどちらを選ぶか質問したら、「昼はミューズで、夜はファム・ファタールのように暮すことができたら…」と答えた。名答ではないか。
呉明哲(オ・ミョンチョル)論説委員oscar@donga.com