Go to contents

おカネを貯めるほど損するとしたら…

Posted March. 26, 2004 23:01,   

한국어

『マネー崩壊』

ベルナルド・リエター著/カン・ナムギュ訳

485ページ、2万4000ウォン、チャムソル

「私たちが知らない『おカネ』があった」

誰にも耳寄りな話に間違いない。どこかに隠れているおカネを探すことに加わることができるのなら、整理番号が万の桁であっても、受け付け順位を一日中待っているかも知れない。しかし、著者が言う「私たちが知らないおカネ」はこれとは違う。

著者はおカネが言語と同じく社会の無意識の合意から出ると言っている。そうであるなら、すべてのおカネが同じであるとは限らない。国が発行して、貸せば利子の生じる今日の貨幣は、おカネの持つ「一つ」の顔に過ぎない。

同書で著者は今日の経済システムで使われているおカネを「陽」のおカネに位置づけて、これに対比される「陰」のおカネを探して歴史探険に乗り出す。

著者は10〜12世紀の欧州と紀元前3000年頃〜紀元後2世紀のエジプトという二つの時空間に注目する。著者によると、この時期の二つの社会は異例に豊かだった。10〜12世紀欧州人の体格はどの時代より壮大で、当時ロンドンの女性の背は今日より高かった。黄金期のエジプト人は一日平均8時間だけ労動し、多くの休日を楽しんだ。紀元445年、アテネに飢饉が発生するや、エジプト人は穀物を無償で援助した。

何がこうした豊かさを生んだのだろうか。「私たちの知らなかいおカネ」、つまり「陰のおカネ」がまさにその秘密のカギだという分析だ。陰のおカネは貸しても利子を受け取らなかった。むしろ金融機関に保管する時、「留置料」を払わなければならなかった。数年ごとに旧貨幤と新貨幤の交換割合を決めて一部を税金として納める。おカネは貯めるほど損だったため、貨幣はスムーズに流通し、人々は土地を切り開いたり農機具を用意するなど、自分の財産を最高に活用して財貨の生産を増やした。

「実際そうした時代があったのだろうか」。こうした疑いをあざ笑うように、著者の視覚はもう一歩先に進む。二つの社会は文化的にも興味深い類似性を見せてくれる。この時期、古代エジプトではイシス女神に対する崇拝が絶頂に達し、10〜13世紀の欧州では「黒い聖母像」への崇拜が流行った。二つの社会で死はタブーではなかった。詩人は死を高吟し、臨終の参観も非常に自由だった。女性の権利も尊重された。ギリシア人は女性が男性に先に恋を告白するエジプト人をとても興味深く見ていた。

こうした現象を説明するため、著者はカール・グスタフ・ユングの「原型心理学」を引き合いに出す。「偉大なる母」に対する尊重が集団的深層意識に根ざしている社会では、女性尊崇と尊重、死に対するタブーの解除、陰の貨幣制度導入がいっぺんに進められた。しかし、こうした社会がその後、「女性に対する迫害、死をタブー視する態度、利子の適用などが通用される陽の貨幣制度」を持つ「陽」の社会に切り替えられたという説明だ。

同書で読者は著者が一種の「巨大談論」を夢見ていることを窺い知ることができる。あらゆる「巨大な話」が時々そうであるように、場合によっては歴史的事実に対する論証が几帳面でなかったり、自分の説明を裏付ける証拠だけ熱心に引き入れているという疑いが捨て難い。それにもかかわらず、貨幣制度そのものが理性と合理性よりは一種の「集団無意識」をベースにしており、「代案」の設計が可能だという点を自然に提示したのは、同書の持つ重要な成果とみられる。

著者はベルギー・ルバン大国際金融学科教授を務め、1992年「ビジネスウィーク」誌で「世界最高のマネー・トレーダー」に選定されて、米ソノマ、カリフォルニア大学で原型心理学を講義するなど、盛りだくさんの経歴を持っている。

原題「Mysterium Geld」(2000年)



劉潤鐘 gustav@donga.com