●女の過去:「どうして約束時間に遅れたんだ」(ホンジュン)「(ハン先輩に無理矢理)旅館に連れて行かれたの。そこで暴行を受けたわ」(ソンファ)「お前は、俺とセックスすれば清められるんだ。分かるか」(ホンジュン)「私、清められたいわ。お願い」(ソンファ)
成賢娥(ソン・ヒョナ)〓自分の過去について「してません」と否定したくはない。ヌード集にしても同じ。この映画を通してすべてを吐き出したつもり。レッテルのようについてまわる自分の過去、自分に対する先入観、何もかも吐き出してしまう。この映画を通して、監督や他の役者たちから、糧となるべきエネルギーをもらえた。
洪尚秀(ホン・サンス)〓ソン・ヒョナとは、フィーリングがあった。役者としてのテクニックや従来のイメージよりは、情熱というか、映画を通じて新しいものを熱望する、そんな人柄…。役者としてではなく、彼女本来の性格を感じた。
●日常:「足、毛深いんですね」(セックスを終えたムンホ)「毛深いでしょ。この頃剃ってないから」(ソンファ)「足も剃るのか」(ムンホ)
洪〓セックスという行動を通じて、私は自分たちのもつ意識の虚構性を見つめる。先輩のホンジュンは純潔意識という観念に捕らわれ悩む反面、後輩のムンホは「ヘアースタイルが変りましたね」「うめき声が可愛いですね」「足に毛が生えてますね」と言いつつ、愚かにも肉体に執着する。そんな対比が面白い。
ソン〓学生時代、コンパに参加した時も同じだ。歯に唐辛子の粉がついているのを見ただけでぞっとする。未熟さ、あるいは若さとはこんなものじゃないだろうか。女の足に生えた毛にも身震いする男。だから別れる決心をする男。
●女は男の未来だ:「私、言ったでしょ。絶対にしないでと」(ムンホがソンファのスカートの下を弄ると)「ホントに聞いてないですよ」(ムンホ)「男はみんな同じよ。抱いてくれさえすれば、ホントに寝れたのに」(ソンファ)
洪〓タイトルが、あまりにも断定的すぎる。ところが、私にはいくら聞いても、ぼんやりとしていて、一向に掴み難い言葉だである。
こんな乖離感が、私の興味をそそった。
必ずしもタイトルが、映画を説明する必要はないと思う。「男は女の未来だ」と言ったところで…。私は、明確なメッセージを決めて、それを伝えるために詳細を描いたりはしない。逆に、欠片(詳細)のひとつひとつが、先に私の方に近づいてくれば、それらをひとつにまとめ上げる。観客の反応を見て、ようやく「あ、自分が引き出したかったのはこんなものだったのか」と、逆に感じさせられる。
ソン〓男たちが俗物だって?いや、可愛すぎる。ホンジュンのような、男たちの向こう見ずなところが可愛い。男は自分の感情に忠実な動物だ。2人の男が、飲んでいる途中で急に過去の女を思い出しては、一方的に女のもとを訪ねる。そんな男たちを、1人の女が抱いてくれる。
そういう女は、過去の女であれ、これから出会う女であれ「男の未来」であり得る。但し「未来」が常に幸せなものではないということを、男たちはくれぐれも肝に銘じてもらいたい。
李承宰 sjda@donga.com