最近、移動通信会社の携帯電話サービス加入者募集を代行する別定通信会社の不法マルチ販売が増えるにつれ、一般の人の被害が続出している。
しかし、移動通信各社は別定通信会社のマルチ営業に対して「見逃し」で終始しており、「売上げ拡大だけに目の眩んだ不法行為を助長している」という非難を浴びている。
マルチ販売は、健康食品や家電製品などの販売に多く使われる手法だが、最近、番号移動制の施行と関連して、携帯電話サービスの販売にまで拡がっている。
▲マルチ営業の実態〓ソウルのタクシー運転手のシン某さん(55)は営業用タクシーを運転しながら乗客を相手に携帯電話サービスのマルチ販売を行っている。彼は12日、大学生から主婦まで数十人におよぶ携帯電話加入者の個人情報が盛り込まれた厚い書類の束を見せてくれた。
シンさんは「信用のある有名移動通信会社の商品であり、新規顧客を集める度に加入費の一部と加入者通話料の15%がもらえるので、月1000万ウォンほど稼ぐことができる」として、携帯電話サービス加入とマルチ販売に跳びこむことを勧めた。
京畿道連川郡(キョンギド・ヨンチョングン)のホ某さん(54、労働)は「数ヵ月前、友人の勧誘で携帯電話サービスのマルチ販売を始めたが、新規顧客の確保は不可能に近くて加入費だけが飛んで行った」とし「携帯電話の料金も高くて3ヵ月前に解約を要求したが、通信会社からは何の返事もない」と訴えた。
彼らが手がけたマルチ販売は、別定通信会社が移動通信会社から通信網の一部を借りて別途の料金制で、顧客を集めて営業する携帯電話サービス。このサービスは一般携帯電話サービスより通信料金が高いだけでなく、携帯電話使用によるポイント恩恵なども受けることができない場合が多い。
しかも約3万ウォンの携帯電話加入費とともに、多くは100万ウォン余りのマルチ販売員加入費を要求することもある。マルチ販売員を確保して加入費をもらうのは不法だ。
「消費者問題を研究する市民の集まり」の金ジョンジャ相談部長(44、女性)は「今年は別定通信各社に関連した被害相談が1日に10件余りになる」とし「その手法がさらに多様かつ巧妙化し、消費者は簡単にひっかかってしまうのが実情だ」と懸念を示した。
ソウル逓信庁によると、現在45の別定通信会社が携帯電話サービスの営業をしているが、これらの不法営業に対しては把握することができないのが実情。
▲移動通信各社の「見逃し」〓被害を受けた消費者は専ら「有名移動通信会社のサービスだと思って加入した。移動通信会社に電話をかけたら『別定通信会社の所管』という返事が返ってくるだけだった」と不満を現わした。
移動通信各社は、別定通信会社の加入者増加はそのまま自分たちにも利益につながるため、これらの不法行為に対して見逃しをしている。
LGテレコムのチョ・ソンホ広報課長は「一応、別定通信会社を通じて加入した顧客の管理は法的に別定通信会社の責任だ」とし「顧客が被害を被るのは残念だが、別定通信会社との連携は競争で生き残るための移動通信会社の不可避な選択だ」と話した。
KTFの李ジョンウ広報課長も「別定通信会社は、私たちとは違う方式の事業者なので、問題が発生しても向こうが責任を負うべきだ」と話した。
しかし最近、ある別定通信会社を警察に告発したYMCA市民中継室の金ヒギョン幹事(27)は「移動通信各社は同問題に対して法的責任はないかも知れないが、被害を受けているのは該当の移動通信会社の消費者であるだけに、道義的なレベルでもこれ以上の被害拡散防止に直接乗り出さなければならない」と指摘した。