経済政策の方向をめぐって政党間、労使間はもちろん、政府与党の内部でも相反した観点が対立してきた。「市場改革と分配改善優先論」と「市場活性化と成長促進先行論」に大別される。目標は同じく「経済体力の回復とこれを通じた当面課題の解決および成長潜在力の向上」と信じたい。しかし、優先順位を異にする解法が衝突し続けば、政策の右往左往する現象が繰り返されて、政策の漂流と共に経済難をさらに深化させる恐れが高い。
また、経済に対する現実認識において、危機か否かをめぐって感情的な攻防まで加わり、市場の混乱はさらに広がる。経済に対する診断から食い違えば有効な処方箋に対する速やかな合意を見出しにくいという点で心配せざるを得ない様相だ。
このため、私たちは職務に復帰した盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の経済に対する認識と政策方向表明に高い関心を持って見守った。おとといの盧大統領の談話中で「民生経済の厳しさを決して放置せず、格別な警戒心を持って経済を徹底的に点検管理する」という覚悟をまず歓迎する。しかし、こうした約束だけで複雑に絡み合って構造化されている経済の諸問題を簡単に解決することができるなら、危機論そのものも提起されなかっただろう。
残念ながら盧大統領の経済に対する一部認識は、市場の不安をさらに加速させる恐れがあることを指摘せざるを得ない。盧大統領は「自分に有利な政策を貫かせるために危機を拡大させる側面がある」と述べた。様々な調査によれば、経済専門家と国民の多数が経済危機を肌で感じている。なのに、大企業などが危機を意図的に助長すると疑うのは、政府と民間の現実認識における隔たりを浮き彫りにするだけである。
盧大統領は計画に従って着実に成長潜在力を育てていくと述べたが、今すぐ投資と消費を促進する環境整備なしでは、経済の立て直しは難しい。だから盧大統領自らが警戒した「無理な政策」を改革の名の下で乱発して、企業と市場の不透明さを拡大させてはならない。それより企業の士気を高めて経営と投資を難しくする要素を取り払う支援策が優先されるべきだ。そうしてこそ働き口の創出など当面の課題や新しい成長エンジンの構築など長期課題を共に進展させることができるだろう。
大企業支配構造に対する人為的なメス入れなどを狙ったような盧大統領の「改革」の強調は、政府与党内のいわゆる改革派を勢いづけた。これによって市場活性化に焦点を当てている李憲宰(イ・ホンジェ)経済副首相と洪在馨(ホン・ジェヒョン)ヨルリン・ウリ党政策委議長らの立地がさらに狭くなる恐れがある。これでは政府与党内の政策異見と様々な主張を、まともに調整できるか疑問だ。経済の「失われた1年」だった昨年の二の舞を踏むのではないか心配だ。
経済回復のための盧大統領の一次的な役割は、まさに成長を通じて分配の善循環構造が生まれるように政策の優先順位をより実用的かつ現実的に設定し、政府与党が一貫してこの実現に向けてリーダーシップを発揮することだと信じる。政府と企業関係を権力対権力にとらえたり、企業を治めなければならない対象と認識しては困る。企業への牽制ではなくできる限りの企業支援を通じて、世界的競争力を持つ企業がさらに増加するようにしてこそ、成長潜在力を高めて経済も回復させられるという認識が切実に求められる。