「男性は性欲をコントロールするのが困難な反面、女性は食欲を抑制することが困難だ」。米ウェスリーアン大学の心理学教授カール・シャイベ氏は人間の最もプリミティブな欲求に対する男女の違いについてこのように述べた。どちらも生存と種族保存にとってなくてはならないものだが、重要性においては男女間に多少の差がある。権力を志向する男性は性もやはり権力行使の一種とみなす。反面、狩猟採集時代から狩りをして食べ物を持ってくる男に選ばれなければならなかった女には、魅力的な外見が重要だった。容姿に対する女性の強迫観念はここから始まると説明している。
◆肥満に対する男女の反応が違うのもこのためだ。江北三星(カンブク・サムスン)病院とソウル峨山(アサン_病院の調査によると、肥満男性の半分は「自分は太っていない」と答えたが、女性は実際に太っている人(16.5%)よりも多くの人(22.1%)が自分が太っていると答えた。外見が女性生存の必須条件のように考えられている社会的なプレッシャーのために、モデルのようスリームボディに憧れているためだ。太っているとガン、糖尿、高血圧など病気にかかる確率が高いが、女性はむしろやせようとして死に至ったり、健康を害するケースが多いようだ。食欲を我慢できない自分の意志の弱さと、外見至上主義の社会を批判しながら。
◆肥満は食欲抑制という個人的なレベルで解決すべきことではないという主張も少なくない。米国の進歩脂肪承認国家協会(NAAFA)という団体は、「体重を調節するのはダイエットではなく遺伝子だ」として、罪のない個人を非難するなと主張している。ファーストフードと巨大食品会社の貪欲な商売を批判する声も高い。もっと食べたくなり、気分もよくする砂糖と脂肪をたくさん使っているからだ。ダイエットと運動に気をつかうほどの余力がない貧困階層に肥満人口が増え、彼らに対する差別が激しくなるにつれて、肥満は政治的な問題に広まる兆しを見せている。
◆蔚山(ウルサン)大学の李起業(イ・ギオプ)教授が、「アルパリポサン」という体内食欲抑制物質を世界で初めて発見した。食欲を我慢できず体重との戦いで百戦百敗し、そのために自己嫌悪に陥ったり、社会に不満をぶつけたりしている女性には嬉しいニュースである。体重の調節が健康と美貌と発展のための選択だとすれば悪いことではない。早ければ2年後には画期的な肥満治療剤として使われそうだというのだから、これで肥満の悩みや論争にピリオドを打つことになれば幸いだ。
金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com