世界の最高峰エベレスト(8850m)はもはや畏れの対象ではなくなった。
今年だけでも、エベレストの頂上に登りつめた人は22日現在、167人。商業登山まで生じ、他の登山隊が開拓したルートに沿ってロープを使い山を登り下ることが多くなった。そのため、「エベレストに高速道路が敷かれた」と皮肉る向きもある。
しかし、アルピニズム(alpinism:高山登攀)の挑戦精神が消え去ったわけではない。登山先進国であるヨーロッパ各国の登山家たちは80年代から、高山を登るのにとどまらず、新ルート開拓や巨壁登攀、未踏峰の遠征に力を注いでいる。
全世界のヒマラヤ8000m級の完登者11人のうち、3人を輩出した韓国も例外ではない。
ユン・テフン遠征隊長(36)が率いる5人の「トランゴタワー(ネームレスタワー・6239m)西壁遠征隊」が25日、パキスタンのカラコルム山脈現地へと出発する。山岳専門誌『人と山』の創刊15周年を記念して挑む今回の遠征目的は、世界的な巨壁の代名詞であるトランゴタワーに新ルートを開拓し、「コリアンルート」と名づけること。4500万ウォンに上る遠征費用の大半は『人と山』発行人のホン・ソクハ社長のポケットマネーで賄われる。
トランゴ山群の中でも険しいことで有名なトランゴタワーは、垂直の岩壁だけで1300mにものぼる花崗岩の尖塔。遠征隊は山頂から700m下の直壁の中間にあたる5500m地点にキャンプを張り、1週間岩壁を上り下りしながらリベット(ロープをかけるため岩に打ち込む大きな釘)を設置した後、頂上に登る予定だ。
垂直の岩壁の上で、睡眠はどう解決するのか。蜂の巣のように、岩壁にテントの上部だけを固定し、宙にゆらゆらぶら下がる金属フレームの一種であるポータレッジ(portaledge)で休息と睡眠をとる。山頂に挑む予定日は7月30日。
ユン隊長は「アルピニズムという用語自体が、新しいものに対する挑戦を含んでいる。頂上に登ること、新ルートを開拓することは共に価値あることで、多様性の一つだと思う」と語った。
田昶 jeon@donga.com