こんな時は何の知らせもない方がむしろ希望を抱かせるものだ。金鮮一(キム・ソンイル)氏を拉致した武装グループが設定したタイムリミット(22日午前1時)が「無事」過ぎると、人質解放もありうるだろうとの期待が大きくなってきた。無実の民間人が犠牲にされてはいけないという、国境を越えた人道的な願いが拉致犯を動かし、血生臭い計画をあきらめさせる「奇跡」が起きることを切に願うばかりである。
数多くの韓国人が、金氏の無事帰還のために涙ながらに訴えている。韓国のネチズンから、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラと名前の似ているインターネットサイトに「金さんを助けてほしい」というメールが殺到し、サイトが閉鎖される騒ぎまで起きた。イラク派兵反対が主な目的ではあったが、多くの市民がロウソクを持って通りに出て、金氏の無事帰還を祈ったりした。家庭や職場で金さんの釈放を祈る国民はどんなに多かったことだろう。
イラクのスンニ派の指導者協議体である「イラク・ムスリム・ウラマー協会」も、金氏の解放を促した。イラク人までもが金氏の解放を要求しているということは何を意味しているのか。民間人の拉致と殺害、脅迫は人道的に許しがたいだけでなく、イラク問題の解決に決して役に立たないという意味ではなかろうか。犯行グループはイスラムのために戦っているとすれば、少なくともイスラム指導者の勧告に耳を傾けるべきだ。
希望に期待ををかけてはいるが、政府は最後まで緊張を緩めてはならない。強力な影響力を発揮しているアルジャジーラ放送局を活用して訴え、イラク聖職者協議会との接触など全ての手段を動員して総力戦を行うべきだ。
目標は金氏の生還である。一国民の命が政府の交渉能力にかかっているという切羽詰った状況で、最後まで最善を尽くしてほしい。必要なら潘基文(バン・キムン)外交通商部長官はもちろん、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も金氏の解放に乗り出すべきだ。